図説 鉄道配線探究読本/井上 孝司

■鉄道,龍的図書館

当然ながら、鉄道は線路以外のところを走ることはできない。

そういう意味では、鉄道は線路がすべてであり、どのように線路を配置するか…つまり配線するかが鉄道のサービスそのものを形作っているといっても過言ではない。

また逆に言えばそうした配線の状況をフルに活用して、ダイヤを作るのも鉄道事業者の腕の見せどころとも言える。

幼いころから、そうした配線を見たり考えたりするのが好きで、勝手に空想して配線を描いていたこともあった。

いまではインターネットのおかげで、全国の鉄道の配線を知ることができるようになった。

いいの世の中になった。

本書は、“配線ファン”ならほぼ常識的な内容も多いが、さまざまな実例を紹介しながら、配線に関する考え方や仕組み、なぜそのような配線になっているのかといった情報を丁寧に紹介している。

たとえば、スイッチバック…豊肥本線立野駅、箱根登山鉄道出山信号場・大平台駅・上大平台信号場、篠ノ井線姨捨駅、小田急江ノ島線藤沢駅、石北本線遠軽駅など、それぞれの存在は知っているが、同じ章でまとめて見てみると、それぞれの特徴が見えて興味深い。

配線は一度作られたらそのまま…ではなく、運行される路線の状況によってどんどんと変わっていくものだ。

毎年行われるダイヤ改正と違って、線路の配線の変更はどうしても時間のかかる作業になりがちだ。

規模の大きな工事になるので、京浜東北線浜松町駅山手線渋谷駅、つい最近では東京メトロ東西線南砂町駅…と、利用者にも影響のある工事も多く、実は“配線”は、けっこう身近な存在とも言える。

東北新幹線と“山形新幹線”が分岐する福島駅での大規模な改修工事や、おそらく本書で取り上げられていなかった気がするが、中央◦青梅線でグリーン車を2両増結するための工事も、時間を要したがいよいよ佳境に差し掛かっていて、これからも配線から目が離せなさそう。

巻末に索引があるのはよいのだけど、それらはすべて、配線に関する専門用語ばかりなので、できれば、本書で取り上げた駅名や路線名などがあれば、もっとよかった。

Posted by ろん