看板建築図鑑/宮下 潤也

■建築・都市,龍的図書館

photo

看板建築図鑑
宮下 潤也
大福書林 (2019/12/24)

「看板建築」とは、ざっくりといえば、関東大震災後に出現した、木造2、3階建ての正面だけを銅板、モルタル、タイルなどで装飾した町屋のことで、古くからある街を歩けば、ときどき目にすることがある。

柱の形状、レリーフ、表面の銅板の張り方など、おそらくひとつとして同じ看板建築は存在せず、よく見ればとても凝った作りをしているが、なかなかしっかりと見る機会はない。

本書では、北は秋田から南は佐賀まで、全国60弱の看板建築を、見開き1ページで、左側にはイラスト、右側には解説と見どころのポイントなどが紹介されている。

イラストにすることで看板建築の特徴がよくわかる。

おそらく実物を見ても、ここまではっきりと特徴を確認することができないのではないかと思う。

そういった意味では写真よりもわかりやすい。

看板建築は、確固たる定義があるわけではないが、本書では定義を以下のように挙げている。

①大正時代から昭和初期にかけて作られた木造の商店、民家、あるいは双方を併せもつ店舗併用住宅。
②街路に面するファサードを銅板、モルタル、タイル等の不燃材料で被覆したもの。ただし建物の四周ぐるりと被覆したものは含まない。
③ファサードのデザインは擬洋風商店建築の流れを汲む西洋建築風のもの。あるいは江戸小紋などの伝統的な文様を取り入れたもの。

どれも、作られてから90年から100年近く経つわけで、当然ながら老朽化は進み、なんとか戦争を乗り越え、つい最近まで存在し続けたものの、が、解体されてしまった建物もある。

本書で紹介されているなかには、川越からも3軒も紹介されていた。

実家にいるときにはとても身近にあったわけで、気づかないものなのだ。

Posted by ろん