都会の異界 東京23区の島に暮らす/高橋 弘樹

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都会の異界 東京23区の島に暮らす
高橋 弘樹
産業編集センター (2021/7/14)

東京23区にもいくつか島がある。

以前自分も訪れたことのある妙見島が有名だが、たとえ人工島であっても、島は島だ。

島は、水で周囲を囲まれて、わずかに橋でつながっているだけでも、独特の世界を作り出している。

隔絶されているからこそ、いろいろなものが見えてくるのかもしれない。

23区にある島に魅了され、佃島に移住してしまった著者は、テレビ東京のプロデューサーだ。

職業柄か、視点がおもしろい。

おじさんやおばさんとの何気ない会話は、ちょっとしたドキュメンタリーを見ているようだった。

また、ちょっとした表現も何となく気に入った。

島は境界に対する感受性を、否応なしに高める。京浜運河の上を走り勝島へ向かうモノレールは、「境界」にまつろいきれぬ人々を乗せた方舟のように思えた。(p.226)

印象深かったのは、佃島に江戸時代から続く盆踊りの話。

佃島の盆踊りは、明暦の大火のときに流れ着いた無縁仏を供養するために始まったそうだが、佃島は、隅田川の河口に位置することから、多くの死体が流れついたという。

そういった事情からか、佃島の盆踊りは、江戸幕府から特別に許可されたことで、当時の歌や踊りが残っているという。

23区にある10の島(佃島、城南島、中之島(北区)、中の島(江東区)、京浜島、勝島、平和島、昭和島、月島、妙見島)が紹介されている。

どの島にも歴史やドラマがあって、名前ひとつとっても、「勝島」と「平和島」は隣同士だが、戦前に作られたか戦後に作られたかによって、名前が違うというところが興味深い。

Posted by ろん