桃太郎の発生/花部 英雄

■人文・教育・思想,■歴史・地理

「桃太郎」といえば、言わずと知れた、むかし話のひとつだが、これがどのように発生してきたか…なんて意識したことはなかった。

図書館でたまたま見かけて手に取った本だ。

よく知られている桃太郎ではなく、全国では細かな違いのある桃太郎があり、実に150あまりの桃太郎を収集して分類している。

ざっくりと違いを示すとこうなるらしい。

行き先
鬼が島 93
鬼退治 32
山・岩・家 29

戦利品
宝物 100
殺害 29

殺害法
飲酒殺害 10
猿蟹加勢 17

これを見ると、鬼ヶ島に行かないケースも少なくないというのは意外だった。

また、言い方次第ではあるのだけど、戦利品などなく鬼の”殺害”が目的という物々しいパターンや、酒を飲ませて殺すということもあるらしい。

どのような話でも、当然ながら由来があり、その内容の一つ一つには意味がある。

ただ興味深いことに、桃太郎は、ほかの話と違って、いま知られている桃太郎が登場するのは、江戸時代中期と比較的新しいというが、もともとは、「酒呑童子」と「鬼の子小綱」という説話が、「桃太郎」とつながっているようだ。

「酒呑童子」も「鬼の子小綱」も、鬼が出てき成敗するところは共通しているし、酒呑童子では家来を連れて行くなど、桃太郎を思わせる内容が見られる。

しかし、実は、由来となった説話と比べると、実は、鬼退治し宝物を掠奪をする明確な理由がなくなっている。

これは、本書では江戸の幕藩体制や明治以降の軍国主義によって、桃太郎の存在をスーパーヒーローにしてしまったのではないかと指摘。

きわめて単純明快な、勧善懲悪モノとして扱われたのが桃太郎だったというわけだ。

面白い本ではあったが、ちょっと内容が難しく、最後までは読み進めることができなかった。

Posted by ろん