隈研吾建築図鑑/宮沢 洋

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隈研吾建築図鑑
宮沢 洋
日経BP (2021/5/7)

いま最も注目されている建築家といえば、彼しかいないだろう。

いろいろな意味で注目を集めた「国立競技場」も、命名で議論を呼んだ「高輪ゲートウェイ駅」も、渋谷の新しい顔になった「渋谷スクランブルスクエア」隈研吾の作品だ。

これ以外でも、あちこちで彼の名前を見るような気がする。

実際、1000近くのプロジェクトに関わってるそうで、国や大企業の依頼ばかりでなく、地方の小さな建築から、居酒屋まで設計しているのだそうだ。

これまで、こんな建築家がいただろうか。

隈建築の見どころを「非日常/異質」と「日常/同化」のあいだを、「びっくり系」「しっとり系」「ふんわり系」「ひっそり系」の4つに分類し、それぞれの作品をイラストで紹介している。

一度見たら忘れられない存在感の「M2(現・東京メモリードホール)」は、隈研吾の名前を世の中に知らしめたとも言えるが、あまりの“びっくり系”の作品だったせいか、その後10年ものあいだ、東京での仕事が来なかったという。

隈建築といえば、ルーバーのイメージが強いが、これも最初からではなく、試行錯誤の上に使われるようになったことがわかる。

隈研吾自身が語る印象的なエピソードがあった。

初めての海外での仕事となった中国で、ルーバーとして使おうとした竹がどれも曲がっていた…なんてことがあったそうだが「面白いから使ってしまおう」…ということしたという。

そもそも僕の建築の中にそういう許容性があるんじゃないかと思った。少しずれちゃっても、依然として隈建築である。それに気づいたんです。

自分自身で「隈建築」ということを意識してるということが興味深いが、自分自身も楽しんでいるようだ。

彼の建築の面白さは、こういうところにあるのかもしれない。

栃木県那須町にある「石の美術館」のところで、この作品が紹介される写真では、たいていトリミングされてわからなくなっているが、建物から隣家が丸見えなのだそうだ。

結果的に”借景“となったのは、予算の都合もあり隠せなかったから…と、隈研吾自身が語っている。

つまり、意識してこのような状態になったのだと考えると、隣家が丸見えになることも作品の一部と言える気がする。

建築は現地に行かないとわからないというコメント(p.43)があったが、本当にその通りだっと思った。

Posted by ろん