図解 感染症の世界史/石 弘之

■科学

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図解 感染症の世界史
石 弘之
KADOKAWA (2021/1/29)

新型コロナウイルスが猛威を振るうようになって、1年以上経ったにもかかわらず、まだまだわからないことは多い。

新型コロナウイルスが猛威を振るうようになって1年以上経ち、ワクチンも登場した一方、新たな変異株も現れ、状況は刻々と変化している。

そもそも、新型コロナウイルスは、“感染症”のひとつだが、知らないことが多い。

本書では、これまで人類が経験してきた感染症について、わかりやすく紹介してくれている。

ウイルスや細菌などが引き起こす感染症との戦いは、人類の歴史そのものだ。

冒頭では、ネアンデルタール人由来の遺伝子を持つと重症化してしまうなど、新型コロナウイルスについての最新の知見を紹介している。

https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000207770.html

2章以降からは、さまざまな感染症に人間は苦しめられてきた歴史を振り返る。

今回の新型コロナウイルス(COVID-19)は、これまでとは桁違いの広がりを見せているが、そこに至るまでには、ほぼ10年おきに、コロナウイルスが原因の感染症、SARSやMERSが起きていた。

また、人間ばかりでなく、鳥や豚のインフルエンザなども、やたら最近よく聞くと思ったら、これも元はと言えば人間が原因だそうで、過去半世紀で湿地の50%が失われた結果、水鳥類の越冬地が過密になり、感染の機会が格段に増えたことによるのだという(p.86)

そう考えると、こうした感染症は、人間がこの地球で生きていく中では必然であり、遅かれ早かれ、いまのような状況になってしまっていたのかもしれない…とも思えてくる。

そういえば、去年人間ドックのついでに自分も検査をした「風疹」もそうだし、子どものころに登場して得体が知れず怖いと思ったエイズ(後天性免疫不全症候群)も、もちろん感染症だ。

風疹はワクチンで防げる感染症のひとつであるにもかかわらず、日本で流行を抑えることができず、世界から警戒されてしまっているそうだ。

また、エイズのほうも、世界的に大きな問題となってから半世紀がすぎて、近年は弱毒化している傾向にあるそうだが、先進国では日本だけが増え続けている(p.95)という。

日本の感染症に対する取り組みや考え方はあまり進んでいるとはいえないことがわかる。

人類最強の感染症といわれるエボラ出血熱…あまりに毒性が強いせいで宿主のヒトを殺してしまうため、逆に感染が広がらなかったそうだ。

ウイルスにとってもっとも有利な寄生方法は、宿主を殺さずにいつまでも自分を複製させることだから、新型コロナウイルスもいずれはそうなるらしいが、それは、きっと何十年という単位だろう。

そういった意味では、“中途半端な強さ”を持つ新型コロナウイルスは、かなり厄介な気がする。

ただでさえ、日本の感染症に対する取り組みが心許ないから、そういう弱いところを突いてくる感じがして、いろいろと考えさせられた。

ペストの前に無力だった教会が急速に権威を失い、宗教改革やルネッサンスにつながった…など、感染症によるパンデミックによって世界は大きく変えられてきた。

果たして、今回の新型コロナウイルスは、世界をどう変えてしまうのだろう。

Posted by ろん