官邸vs携帯大手 値下げを巡る1000日戦争/堀越 功

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2017年12月、楽天が携帯電話への参入を発表し、翌年8月には当時の菅内閣官房長官が「携帯料金は四割引き下げる余地がある」と発言。

この発言は、大きな波紋を呼ぶことになるが、すでに官邸と行政によるシナリオがあったのだ。

本書は、楽天の参入発表から、菅首相就任までの3年弱の“官製値下げ”の攻防を描く。

第1章は楽天の携帯電話参入の裏側を紹介し、第2章では、NTTドコモの最大手であるがゆえの苦悩、第3章以降では焦る総務省と振り回されたり裏をかく、ソフトバンクとKDDIの攻防が描かれている。

楽天が当初の予定から大幅に遅れてサービスを開始したものの、他社にインパクトを与えるほどではなかった…というところで本書は終わっていて、ちょっと尻すぼみな感じだった。

本書が出版された2020年10月20日というタイミングが微妙過ぎたのかもしれない。

事態はその後大きく変わったのだ。

本書に描かれていたのは、これはあくまで前哨戦に過ぎなかったことがわかる。

NTTドコモが、ついに完全に楽天潰しのプランを発表し、他の2社もそれに追随したプランを発表する。

理由はともかく、国民のあいだで、通信料金が高いと思われてきたことは間違いない。

それを明確に下げようという動きをしてこなかった通信大手にも問題はある。

官邸がかなり強引な手法をもって、ようやくこうしたプランが出てきたのは、官邸に絶大な力があるからこそではある。

しかし、KDDIとソフトバンクの幹部の言葉を聞くと考えさせられる。

「総務省がOKと言っても、官邸がNOと言えばNOになってしまう。これでは総務省に事前に相談する意味がない。」(p139)

官邸があまりに強すぎるのだ。

第3章で総務省・情報通信のエースとして登場した総務省の谷脇康彦氏は、まさにNTTとの接待が問題とされて更迭されるし、本書にも名前が出てきた彼の同期である山田真貴子氏も、同じく接待問題で辞職してしまう。

本当に消費者を向いてくれてる人って、どれくらいいるのだろう…と、なんかちょっとモヤモヤしてしまう感じがした。

Posted by ろん