世界のビックリ建築を追え。/白井 良邦

■建築・都市

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世界のビックリ建築を追え。
白井 良邦
扶桑社 (2020/10/28)

最近はほとんど関わっていないが、銀座の中銀カプセルタワーには、以前は、よく通っていた。

この独特の形に圧倒された僕が、建築というものに興味を持たせるきっかけになったのが、この建築だった。

想像とか絵の世界ではなく実際に造ってしまう…明らかに普通ではない建築を実現させるというのは、相当な“力”とか“熱量”が必要だと思う。

誰でもできることではないし、それを実現させるだけのさまざまな条件が整わないとできないはずだ。

だから、結果的に唯一無二の存在となって、それが“ビックリ建築”として残っている…そんな感じだろうか。

本書で紹介しているのもそういった建築ばかり。

観ていて思ったのは、表紙の“直線が存在しない”住宅をはじめ、冒頭でかなりのページを割いて紹介している「FUTURO」、そして中銀カプセルタワーなど、窓が“丸く”なるととたんに、“ビックリ”感が出るんだということ。

あと、寒河江市役所の設計が、中銀カプセルタワービルを設計した黒川紀章だということは知っていたが、そこにたくさんの岡本太郎の作品があるとは知らなかった。

著者が実際に取材した世界の“ビックリ建築”を紹介している。

このビックリ建築は、著者曰く、以下のような明確な基準があるという。

01.そのフォルムに驚き、心を揺さぶられる。
02.ただし、見かけだけのキワモノ&キッチュはダメ。
03.その建築が生み出された「時代性」「社会性」が感じられる。
04.その建築の誕生に至り、精神性や理念が感じられる。
05.“知られざる”“知る人ぞ知る”のものである。
(誰もが知るアイコンのような建築は該当しない)

明確と言ってもどうしたって主観が入ってしまうから、同意できない部分もあるかもしれないが、ほぼすべて同意できるものばかりだ。

こうしてこの本を読んであらためて思ったのは、建築とは、その時代を残す“化石”みたいなものかもしれないということだ。

だから、きちんと保存すればいつまでも残るけど、気付かないうちに失われてしまうこともあるのだ。

著者の言う基準05のように、知られないうちになくなってしまう建築もきっと多いだろう。

時代を経て失われてしまう前に、目に焼き付け、実際に目の当たりにして体感しないと。

本物の化石と違って、建築は実際に自分の身を置くことができるのだから、こんなに楽しいことはない。

コロナ禍で外出もままならないが、いつかまたビックリ建築に身を置いて、その世界に浸りたいものだ。

本書で紹介されていた「FUTURO」は、もう世界でもほとんど残っていないらしいが、検索してみたら、群馬の専門学校に残されているらしい。

これも機会があったらぜひ観にいってみたい。

Posted by ろん