駅の文字、電車の文字/中西 あきこ

■鉄道

鉄道のデザインと言ったら、目立つのは、車両であったり駅舎であったりするが、本書で取り上げる“文字”は、とても重要なデザインの一部だ。

著者は、鉄道のなかでも特に“文字”に注目していて、デザインそのものから、その文字をデザインした人に至るまで、とても興味深い研究を続けている。

利用者にとって、文字が統一されていると信頼感が高まるし、鉄道事業者自身にとってもすごく意味があるようだ。

それを物語る、名鉄のエピソード(p.159)はとても印象的だった。

1973年(昭和48年)急増した乗客の対応するピンチヒッターとして、自社発注した車輌ではなく、止むを得ず東急の車輌を導入することになった。

車体の色を変えても、細かなところの差があって、なかなか自社の車両と思えなかったが、車輌に、名鉄独特のオリジナル文字(名鉄文字)の車輌番号を貼り付けることで、一時的な措置とはいえ名鉄の車輌、つまり我が子のようにお守りができるマイカー意識が芽生えた…という。

先日乗った名鉄の電車で、独特な番号を実際に見たが、かなり存在感があって、ただ単に車両区別するためだけの存在ではない感じがした。

数字以上に意味を持ってる感じがしてくる 数字以上に意味を持ってる感じがしてくる

かつては職人技によってデザインされ、伝承されてきた文字は、コンピュータに収められ、寸分の狂いなく再現できる時代となった。

統一感を持たせ、見る人にわかりやすく情報を提供するという目的は十分果たせるようになったが、そのぶん、“味わい”みたいなのは、失われつつある。

仕方のないことなんだろうけど。

Posted by ろん