ウェブ社会のゆくえ/鈴木 謙介
- ウェブ社会のゆくえ 〈多孔化〉した現実のなかで (NHKブックス)
- 鈴木 謙介
- NHK出版 (2013/8/27)
何気なく手に取った本だ。
もうウェブが自分たちの生活に入り込んでどれくらい経つだろうか?
まさに“いま”、こうして感想を入力する機器は、ウェブとつながっているし、無関係に生きることは極めて難しくなっている。
本書の冒頭、“はじめに”では、こう書かれている。
ウェブは既に(というより始めから)現実空間と区別の付かないものとなっており、それゆえ、ウェブで起きていることだけを独立して論じたり、あるいは現実はウェブよりも重要で優先すべきものであるという前提に立って議論したりすることが、もはや無意味なものになっているということだ。
かつては、ウェブが一部の人たちにだけ使い始められた経緯から、そのような見方をされてしまうが、もう多数の人たちが、ウェブにつながる時代。
いまだにウェブの世界が特別視されることがあるが、そうではなく、
現実の“一部”がウェブだと考えた方が良いだろう。
そうした状況を著者は、「情報の多孔化(たこうか)」と呼んでいる。
現実空間の中にウェブが入り込むような感じで、現実空間に情報の出入りする穴がいくつも開いている状態のことだ。
とても興味深い表現で、まさに、現実とウェブ世界が複雑に絡み合っていることを表現している感じがする。
ソーシャルメディアと人々のかかわりでは心理学的な要素も踏まえたり、テレビとの関係、アニメの聖地巡礼など、一見、ウェブとは関係なさそうなところも取り上げ、豊富な事例とともに、現代社会とウェブとの関係を解き明かしていく。
ウェブにつながる“穴”は、ときとしてブラックホールのように、現実空間からあらゆる情報を吸い込んでいくこともあれば、逆に、ホワイトホールのように、情報が吐き出されてくることもあるようにみえる。
こんな穴が無かった時代を生きた記憶があるのは、いまとなっては貴重なことかもしれない。