予想どおりに不合理/ダン アリエリー
- 予想どおりに不合理: 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
- ダン アリエリー Dan Ariely
- 早川書房 2013-08-23
by G-Tools , 2018/09/23
会社で一緒に仕事しているSさんから、僕が「きっと面白いと思うはず」…と紹介された本。
「行動経済学」が話題になったきっかけになったとも言われてるようで、この本のことは直接は知らなかったが、どこかで聞いたことがあるのは思い出した。
人間は経済学で言われるような、合理性に基づいて行動するのではなく、むしろ不合理に行動するものだ。
タイトルにあるように、実は、それらの行動は、誰もが、無意識的に、なんとなく予想はついている。
それだけに、豊富な事例を次々と紹介されると、そのたびに意外な気付きに驚かされる。
似たような例を見たことがある気がするから、よけい気になったのだけど、紙の新聞とWeb版の新聞の広告に関する研究は興味深かった。
1. Web版 59ドル
2. 紙版 125ドル
3. 紙版とWeb版 125ドル
こんな選択肢のなかから、調査対象の100人の学生たちどれを選ぶか?
1. Web版 59ドル…16人
2. 紙版 125ドル…0人
3. 紙版とWeb版 125ドル…84人
次に、誰も選択しなかった、紙版 125ドル をあえて除いた選択肢を用意する。
1. Web版 59ドル
2. 紙版とWeb版 125ドル
紙版を除いただけで、それ以外の条件は変わっていないのだから、合理的に考えれば、人数に変化はないはず…である。
しかし、予想どおりに不合理な結果となる。
1. Web版 59ドル…68人
2. 紙版とWeb版 125ドル…32人
意外なようで、意外でもない回答は、とても興味深い。
これは、まったく特性の異なるAとBという選択肢があった場合、明らかにAより劣るA’という選択肢が加わると、Aとの単純な相対比較ができるようになり、AがA’に対してだけでなく、全体のなかでも優れているように見えるようになるためだという。
これからわかるのは、アンケートなどに応用すれば、世論の操作なども簡単にできてしまいそうだ。
明らかに選ばれることのないような選択肢が混じっていたら「要注意」だということはわかるかもしれないが、微妙な選択肢が混じっていたら、いったん立ち止まって考えてみたほうがいいかもしれない。
また、道徳、倫理、ルールや習慣といった「社会規範」と、金銭が絡む「市場規範」のそれぞれが、人の判断に大きく影響していく話もとても興味深かった。
挙げていくとキリがないので、これ以上の紹介は割愛するが、人間のちっとも合理的でない、不可解な行動を、著者自らの経験を踏まえて、楽しく、そして学術的に紹介する本書は、読んでいてとても楽しかった。
ある意味、人の”本能“に組み込まれた行動パターンは、知らず知らずのうちに、不合理な行動へと導かれていかれるのだろうけど、その背景を理解すると、ほんの少し生き方が上手になるような気がする。気のせいかもしれないけど。