地域再生の罠/久繁 哲之介
先日は、JRは生き残れるのか?という本を読んだが、これは地域再生の話にもつながると思って、たまたま手に取ったこの本を読んでみた。
地域再生プランナーの著者が、自身の経験を踏まえ、実際にはうまくいっていない地域再生の諸問題を指摘していく。
まず「大型商業施設への依存が地方を衰退させている」という例として、宇都宮109撤退を取り上げている。
開業2年目の夏に、著者が聞いたという若い女性グループの会話(要約)に、違和感を覚えた。
宇都宮109の店員がデブだという罵倒に加え、テナントに100円ショップがあるのがおかしいとか、店舗の向かいに八百屋があって、その大根を売ってることが「超むかつく」から、渋谷の109に行こう…と言っていたというのだ(p.21)。
この会話から宇都宮109の撤退を予見できる顧客の不満や本音がいくつも含まれている…とつないでいたが、果たして本当だろうか?
たしかに、こうした施設においては、周辺も含めて、ブランドやテーマに一貫性を持たせることが大切なのは間違いないし、こうした配慮は、テーマパークにも通じるものだ。
しかし、若い女性が、ここまで示唆に富むことをわざわざ言うだろうか?
さらに、この会話について、こんなことも言っている。
成長途中の若い女性は足が太い傾向にあり、「大根安いよ」の濁声を聞けば「超むかつく」となり、顧客に不快感を与え、街に不利益を与えた…と断じているのだ。
この著者は、大丈夫だろうか?
また、本文中、やたらと「土建工学者」という存在に対して敵意を剥き出しにしているところが気になった。
この土建工学者というのが、具体的に誰を指しているのかはイマイチはっきりしないが、建築や土木の専門家でどちらかといえば行政寄りの人たちのことを言ってるみたいだ。
大根足のように、一方的な著者の思い込みが多分に含まれているのではないかと心配になる。
地域再生は、とても興味深く関心のあるテーマではあるだけに、こうした感情論で語られると問題点がぼやけてしまい、解決が遠のいてしまう気がしてならない。