隠し絵の牙/塩田 武士
コンセプトは、かなりユニークだが、内容は極めてシリアス。
いま日本の出版業界の置かれた現状が、この小説を通じて学ぶことができる感じがする。
主人公速水は、大手出版社の雑誌編集長だ。
そして、この小説の最大の特徴は、この主人公が、俳優大泉洋をイメージして描かれているということだ。
著者が、大泉洋を研究し言動を基にしているから、速水が接待などのシーンで、モノマネをしているところなどは、大泉洋が実際にできるものばかりなのだ。
大泉洋が演技している様子が鮮やかに目に浮かぶので、まるでドラマを見ているような感覚になる。
ユーモアに溢れ、誰からも好かれ、どんなに窮地に追い込まれてもやり返したり、どうしようもない部下の失敗をさらりと挽回してしまう主人公…。
ちょっと“スーパーマン”すぎるかなぁ…なんて思ってしまったが、彼がいよいよ窮地に追い込まれたことで、彼の本性とこれまでの物語の伏線が明らかになり、あぁ!そういうことだったのか…と思わせる結果に…。
久しぶり読んだ小説だったが、とても面白くあっという間に読み終えてしまった。
次は、ぜひ映像で見てみたい。もちろん、主人公は大泉洋で。