ハリネズミの願い/トーン テレヘン Toon Tellegen
主人公は、自分のハリが大嫌いなハリネズミ。
ほかの動物たちを、自宅に招待すべく手紙を書こうとするのだが、どんどん妄想が先に立ってしまって、なかなか手紙を送ることができない。
ゾウは、椅子をテーブルの上に乗せて曲芸を披露するも落下し、椅子とテーブルを破壊してしまう…
カバは、壁を破壊してプレゼントだと持ち込んだ風呂桶に浸かり、当たりを水浸しにする…
キリギリスは、ハリネズミの家のものを勝手に売りに出してしまう…
ロブスターは、ドアを叩き割り、ハリネズミのハリを抜きまくって丸裸にした上に、「今度はもっと痛めつけてやる」と捨て台詞を残す…
クジラは、あたり一帯を水没させながら、小型の噴水というありがた迷惑なお土産を携えてやって来る…
他にも、アリ、ヒキガエル、クマ、カタツムリ、カメ、 ミーアキャット、イタチ、モグラ、ミミズ、アナグマ、ビーバー、カラス、ラクダ…と、振り返ると、ここでは挙げきれないくらいの、ありとあらゆる動物たちが登場する。
話が展開するのかな…と思いながら読み進めるが、ほぼ全編、終始この調子で、読んでいるうちに、鬱々とした気分になる。
もっとも、ハリネズミ自身も、自分の性格についてはわかってるようで、スズメバチ訪問の”妄想”のなかで、こんなことを吐露している。
「ぼくは迷いたくないのに迷わざるをえないんだ。だれかにあそびに来てほしいと願うと、ほんとうに自分がそう願ってるのか自信がなくなる。ごはんを食べ終わったら、まだなにか食べようか、考えあぐねる。目が覚めたら、起きようかどうしようか迷う。何をやってもいちいち迷ってしまうんだ。そこだ自分でヘンだと思う」(p.93)
しまいには、もう動物じゃなくて、”バケモノ”までも、ハリネズミ宅を訪問してくる(もちろん、妄想)。
そして、最後の最後に、ある動物の訪問を受けることになり、その展開を読んで、ようやく落ち着いた気分になったが、全体を通じて、重苦しさを感じ続ける内容だった。
そもそも、ハリネズミは、何のために動物たちを自宅に招待しようとしてるのだろう?
誰かから言われたわけでもないのに、どうして自分のハリが嫌いなのだろう?
あまりに極端な考え方をするので、ハリネズミに対しては、共感よりも、むしろ客観的に見てしまった。
でも、そのおかげで、こうした自意識過剰さは、実はけっこう自分でもやりかねないな…と思ったし、実際、悩みなんて、意外とこういうものなのかもしれないとも思った。