地球はもう温暖化していない/深井 有
二酸化炭素(CO2)の増加にともなって、地球温暖化が進んでいる…というのは、地球環境を語る上での大前提になっている。
この考え方に基づいて、国の政策はもちろん、自分たちの生活にも少なからず影響している。
そして、僕自身もそう信じてきた。
しかし、そもそも、これが根本的に間違っているとしたら…大変な問題だ。
これまで、地球温暖化に対する懐疑論については、ときどき見聞きしてきたが、それを声高に主張する人たちは、往々にして、突拍子もない主張をするような”異端”な学者であったり、根拠の乏しい"陰謀論"を持ち出してきたり…と、意見を聞く気が起きなかった。
もちろん、人間の活動が地球の気候に影響を及ぼすことは十分あり得るとは思っていたが、それと同じか、それ以上に、自然現象による影響はあるはずで、これをどれだけ考慮しているのか?とも思ってきたが、本書では、それらを含め、非常に論理的に解説をしている。
グラフで示される急激な気温の上昇も、氷山が溶け海面が上昇するということも、海面上昇によりツバルのような珊瑚礁が沈むのも、それぞれに、"地球温暖化"以外の理由がちゃんとある…というのだ。
けっして、CO2が温暖化に影響していない…というわけではなく、太陽活動による影響が大きいというのが、著者の主張だ。
- 気候変動の原因はCO2だけではなく、太陽活動が重要である。これは自然現象であるから、制御はできない。
- CO2による温暖化と太陽活動による寒冷化は打ち消しあい、今後の気温は50~100年にわたってほぼ横ばいか、寒冷化する可能性が大きい。
- 大気中のCO2増加そのものは何らの害ももたらさない。(p.174)
その上で…
- 大気中のCO2濃度を問題にするのではなく、炭素資源の浪費を防ぐエネルギー政策を追求すべきである。
- 温暖化防止一辺倒の政策は改めるべきである。
…と主張する。
非常に論理的だし、合理的だ。
もちろん、これほどまで、ずっと声高にCO2の削減が叫ばれてきた状況を考えると、「実は地球は温暖化していない」という180度違う説を、そのまま受け入れるのも、ちょっと勇気がいる。
でも、本書のような解説を聞いた上だと、温暖化を主張する人が多用する「CO2の増加抜きで、20世紀以降の温暖化を説明できない」という理由は、きわめて弱いと思えてきた。