4576 図書館で見つけた本で思い出した

物思いに耽る(雑感)

昨年9月、ある出版社から、名所江戸百景に関しての、問い合わせがあった。

問い合わせのメールには、名所江戸百景をテーマにした本を作りたいということで、広重が描いた場所は現在どうなっているかを調べているうちに、僕のサイトにたどり着いたのだという。

119枚、すべての撮影をされていますか?…という質問だった。

名所江戸百景を巡る企画は、一昨年から始めたものの、当時も今も、遅々として進んでいない…。

仕事も落ち着いていれば、出社前とか早めの帰宅の途中に見に行く…なんてこともできるが、ずっと忙しくて、とてもそんな時間はない。

相当ゆっくりしたペースで現地を訪れているので、もちろん、当時も、まだまだ…という状態である旨を伝えたところ、その後一切の返信がなくなっってしまった。

まぁ、先方の期待に添えられなかったのだから、もう僕に用はない…ということなのだろうから、しょうがない…とは思いつつ、例を書いてるような気がして、正直ちょっといい気はしなかった。

そして、それ以上に、もっと気に入らなかったかといえば、この質問だった。

119枚、すべての撮影をされていますか?

彼らが興味あるのは、名所江戸百景の119枚全部まとまっていることであり、 自分のネタをそのまま使おうとする気満々ではないか…と思えたのだ。

もし本気で調べる気があるのであれば、一部だっていいはずだし、手がかりを積み重ねることだって、本作りには、とても意味のある作業のように思えるのだけど…。

なんだかお手軽に本ができあがってるんだなぁ…と思えてならなかった。
広重「名所江戸百景」の旅: あの名作はどこから描かれたのか (別冊太陽 太陽の地図帖 29)

なぜ、1年以上経ってこの話を思い出したかというと、図書館で偶然、その企画で作られた本を見つけたからだ。

そして、どんな仕上がりになったか…と、おそるおそるページをめくってみた。

自分の目指していることと近い内容だとしたら、ある意味”先を越された”ように思えて、ちょっと心配だった。

でも、幸いなことに、違っていた。

僕のイメージしているのは、広重が描いた風景と、現在の風景を重ね合わせるもの。 できる限り、彼が見たであろう世界を忠実に、まるでタイムスリップしたような状態に近づけたかった。

一方、この本では、描かれた場所の写真は撮られているが、あくまでその”場所”に過ぎず、実際に描かれた景色や方向はまったく考慮されていなかったし、その写真も、幅3cmにも満たない小さなものだったから、比較のしようがない状態だった。

企画から出版まで時間がなかったのかもしれないが、タイトルに書かれてるような「あの名作はどこから描かれたのか?」という内容に沿ったものにできなかったのだろうか?と、思った。

Posted by ろん