4355 第18回文化庁メディア芸術祭
今年も、文化庁メディア芸術祭に行ってきた。
つい忘れそうになってしまう。先週から始まっていたのに、行けたのは、会期末ギリギリとなってしまった。
金曜日だけは開館時間が延長され20時までということで、会社帰りに寄ってみた。

このイベント、毎回、会場の雰囲気が極端に変わるので、ちょっと戸惑うのだけど、今回は、ここ数回の中で一番面白かったような気がする。
アート部門、エンターテイメント部門、アニメーション部門、マンガ部門の4つに分かれているが、僕自身の関心が高いのは、前者2部門だ。
一番最初に展示されているのは、アート部門の優秀賞を獲得した作品。
【センシング・ストリームズ―不可視、不可聴】
電磁波をセンサーで感知し、それを可視化し可聴化したという。巨大スクリーンの前に、ダイヤルがあって、それを操作することで、捉え映し出す電磁波を変えるすることができる。
映像にしても音にしても、よくこういう作品に仕上げることができるよなぁ…と思う一方で、こんなにもたくさんの電磁波に囲まれた生活をしているんだと思い知らされる気分だった。


続いて気になったのが、こちら。
【THE CAPTCHA PROJECT】
中国に、西洋画を精密に模写することを生業としている農村がある。そこの画家たちとの共同作品。
一瞬何を表しているのか分からなかったが、実はこれ、個人情報などを入力するときに人間が入力していることを証明するための、いわゆる“キャプチャコード”。
これを忠実に模写したものだった。なるほど、こうして見ると、芸術作品に見えてくるからすごい。
【これは映画ではないらしい】
誕生から、まったく変わっていない原理の映画の世界に一石を投じる?作品かもしれない。
映画にしても動画にしても、少しずつずれた静止画を連続的に見せる、いわゆる“パラパラ漫画”と同じ原理。
それを、画像は、点の集合という部分に着目しその変化を記録し再生するのが、このプロジェクト。
「動画を再生する」という方法は、決して一つじゃないんだ…とちょっと驚く。


【Symbiotic Machine】
展示室内に置かれた、何と形容していいか分からない不思議なプラスチックの装置…これが作品のようだ。
説明を読めば、これは、微生物をエネルギー源として活動するバイオマシン。まるで生物が餌を捕えるように水面を移動し、有害な藻が発生した場合には、それらを除去する機能も…。
アート、デザイン、バイオテクノロジーがひとつに融合してしまう面白さ。
エンターテイメント部門では、この2作品が気になった。
【のらもじ発見プロジェクト】
店先で見掛ける古い看板には、“洗練されていないけれど個性的で味のある文字”をよく見掛ける。
ここではそれらを、名付けて…“のらもじ”

そんな貴重なデザインである、“のらもじ”フォント化していくというプロジェクト。
キーボードで打った文字が“のらもじ”で表示されるのがなんだかすごく面白い。

【handiii】
150万円以上する筋電義手を、時計やスニーカーをデザインで選ぶような感覚に…そんなプロジェクトも紹介されていた。
スマートフォンや、3Dプリンタなどの最新技術を使うことで、実現に近づいているという。

当事者になるか、身の周りでこういう人を見掛けないからなかなか気付かないが、身近な技術がこうしたことに応用されているというのは、すごく興味深い。

他にも、気になる作品はいくつもあったけど、じっくり鑑賞するには、さすがに時間が足りず…


後ろ髪を引かれる思いで会場を後にした。
来年はもうちょっと時間に余裕を持って来よう。