4301 イエラ・マリ展
板橋区立美術館で開催されている「イエラ・マリ展」に行ってきた。
1960年代から70年代に掛けて、イタリアミラノで創作活動をしたイエラ・マリは、その生涯に、わずか、たった9冊しか絵本を作らなかったにも関わらず、現在も多くの人たちに影響を与え続けているという。
イエラ・マリを扱う展覧会は、日本初だそうだ。
もちろん僕も知らなかったが、おじゃこが見てみたいということで行ってみることにした。
イエラ・マリの絵本は、この展覧会のサブタイトルにあるように、文字はなく、すべて絵で表現されている。
「自分の子供たちに見せたい絵本を作りたい」という彼女の思いから、デザイナーの仕事のかたわら、「りんごとちょう」という作品を発表する。
これが、けっこうリアルというか、生々しいというか…
タイトルには、“ちょう”とあるが、実際は、りんごの花に卵を産み付ける蛾だ。
その蛾が、りんごの中でりんごを食べながら成長を続け、成虫となって外に飛び出す
空を舞った蛾は、りんごの花を見つけ、そこへ卵を産み付ける。
りんごの花が落ち、実を膨らませていくと、最初のページと同じシーンへと続く…
その後に続くのも、生命の循環とか、姿形の移り変わりといった“連続性”のある作品が多い。
りんごとちょうをはじめとする彼女の作品の多くは、絵がリアル。
だから、蛾を見ると、ぞわっとするし、獣の目は鋭く怖い。
こういうのを見ると、先日のジャポニカ学習帳の一件を思い出さずにはいられない。


僕は、この絵本のようなアプローチが望ましいように思う。
彼女の残した作品の原画や下書き、数少ない日本人との交流など、興味深いエピソードも紹介されている。
展示室の写真撮影は禁止だけど、イエラ・マリの世界を表現したロビーや字のない絵本を閲覧できるコーナーなどは写真撮影OK。
板橋区立美術館は、かなりこぢんまりとした美術館だが、今回のような規模だと、ちょうどいい感じ。
駅からちょっと離れて行きにくい場所にあるけど、独特の世界観を楽しめるいい展覧会だった。