新幹線50年の技術史 /曽根 悟

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新幹線50年の技術史 (ブルーバックス)
曽根 悟
講談社 2014-04-18

by G-Tools , 2014/11/25

 

今年は東海道新幹線開業50周年という記念すべき年ということでさまざまなイベントが開催されていたが、本書もタイトル通り、新幹線誕生50年を、“技術面”から振り返る内容となっている。

新幹線を振り返る…というと、どうしても礼賛の声が大きく聞こえてしまうが、当然ながらさまざまな問題もあったわけで、こうした面に触れる機会は、これまで、あまり多くなかった気がする。

本書では、新幹線が試行錯誤を重ねた上で、現在の姿があるということをよく教えてくれる。

こんなことがあったんだ…という、エピソードを挙げてみると…

運行開始から、大成功を収めた新幹線だったが、満席で乗れない客が続出してしまったという。

その窮余の策として、全車指定席だった新幹線に自由席が設定されるが、今度は、自由席に乗客を詰め込んだことから、なんと換気不足で倒れる乗客が続出してしまう。

この問題に対処するため、空調・換気能力を増強することになるのだが、またまた問題が発生。

そもそも、全員着席を前提に設計された新幹線電車なのに、自由席の乗客と空調機器重量の増加で、大幅な重量オーバーになることがあったという。

その結果、重みで台車のバネが潰れてしまい、走行中に、ゴツンと振動が車内に伝わってくるという危険な事態となる。

その後、新幹線の運行を半日取りやめて、数年間にわたって線路を作り替えた、いわゆる「若返り工事」は、こうした背景があったということを初めて知った。

また、近年は、日本の新幹線を輸出しようという気運も盛り上がっているが、「わが国の新幹線が本当に優れているというのは誤解」だと、著者は厳しい指摘をしている。

たしかに、安全実績は素晴らしいが、完全に進化を止めているところもある…という。

例えば、列車同士がすれ違うたびに大きなショックを受ける、通過列車待ちの時間が長すぎる、多様な旅客ニーズに対応していない車内サービスなど…

一利用者として、仕方がないとか当たり前に思っていたようなことは、実は、進化を止めた部分であったという気付き、目から鱗が落ちるようだった。

訪日外国人向けのJR乗り放題の切符である「ジャパンレールパス」が、のぞみ号で利用できないため、このままでは、“新幹線嫌い”を増やすだけだと指摘。新幹線のファンを増やす努力も、大事という考えには同意である。

日本での実績がそのまま海外で通用するというのは誤解…というところも、真摯に耳を傾けるべきことだと思った。

「新幹線」は、間違いなく日本の宝だと思う。

でも、これを無条件で礼賛したり、世界中のどこでも通用するというのは、かえってその価値を大きく毀損してしまいかねない…そんなふうに思った。

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