デジタルは人間を奪うのか/小川 和也
毎日の生活で、デジタル機器に触れて過ごす時間は、長くなる一方だ。
この記事をパソコンに打っている時点で、すでに触れているし、スマートフォンも含め、1日の生活のなかで、デジタル機器を手放している時間の方が短いはずだ。
こんな生活になったのは、わずか十数年前くらいのことだから、そう考えると、あまりの変化に、我ながらビックリする。
コンピューターやスマートフォン、それらとつながるインターネットといった、“デジタル”と人間のかかわりに関する話題を紹介。
デジタルは、どんどん人間と融合し、仮想と現実が曖昧になり、社会にデジタルが進行すると、ロボットに仕事を奪われることもある…と。
本書は、今年9月の新刊なので、ソフトバンクのPepperをはじめ、かなり新しいことも載っているので、最近のトレンドなどもわかる。
ただ伝えられる事象に、多少は疑いの目を向けてもいいのでは…という箇所も…。
たとえば、携帯電話で脳腫瘍が増加するという事例の紹介(p.52)では、けっこう、ありがちな事例ではあるものの、必ずしも因果関係が解明されていないとも言われている。
こういうことがひとつでもあると、もしかして、自分の主張にあった事象だけを集めてきてるのでは?と勘ぐってしまいたくなるところもある。
また、ロボットに仕事を奪われないようにするためには、人間はより高度な知力や感性を身につけ、付加価値の高い仕事を成し遂げる(p.100)…とか…。
仮想現実に人間が翻弄されないためには、人間の嗜好、感性の力を発揮する他ない(p.122)…といった結論は、ちょっと月並みすぎるなぁ…という印象。
著者は、これほど、デジタルと人間の関わりについての知識があるのなら、もっと切り込んだ独自の見方があってもいいような気がした。