建築する動物/ユルゲン・タウツ

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建築する動物 (SPACE SHOWER BOOKs)
ユルゲン・タウツ
スペースシャワーネットワーク 2014-07-31

by G-Tools , 2014/09/18

 

建築に興味を持つようになってから、そういった関連の写真集や本などを見ることも増えたが、その建築主が、「動物」というのは、初めてかもしれない。

たしかに、よくテレビ番組などで、動物たちがビックリするような巣を作ることが紹介されることがある。

これを「建築」というふうに見ると、ちょっと新鮮でおもしろい。

本書では、動物たちが作り出したさまざまな「建築物」を美しい写真で紹介している。

イントロダクションで、イギリスの生物学者リチャード・ドーキンスの新しい視点を引用している。

動物とは、いったい「どこまでが動物か?」という問いかけだ。

普通に考えると、動物の皮膚や毛皮…といった感じになるだろうけど、これをさらに拡大して、動物たちの行動とその結果までを含めて考えるという発想はおもしろい。

つまり、動物たちの住まいも、ある意味で動物の一部と考えられるというのだ。

なるほど…そう考えると、ここで紹介されるさまざまな建築物もちょっと違った見え方になってくる。

オオニワシドリのメスは子育てのための質素な巣作りをする一方、オスは、メスを誘い出すためだけの巣を作る。飾りになる小石やカタツムリの殻などを敷き詰める。

チャイロニワシドリのオスにいたっては、まるであずまやのような巨大な巣を作り、その前には、花や果物、葉やキノコなどで飾っている。

そこに誰か人でもいるんじゃないか…というくらいのものだ。

オオニワシドリにしても、チャイロニワシドリにしても、クジャクのような派手さがないぶん、こうした巣を作るのだろう。
また、アリやハチといった節足動物は、徹底した分業体制で、彼らの大きさから比べるととてつもなく大きな建築物を作り出している。

そう考えると、どこか人間にも通じるところがある気もするけど。

たとえば、レッドウッドアントというアリは、わずか1センチしかないのに、高さ2m以上、直径5mにも及ぶ巣を作る。そこに数十万匹のアリが暮らしているという。

写真を見て壮観だったのは、その名も磁石シロアリ。

オーストラリア北部の広大な原野に無数のアリ塚が並んでいる。

高さ3mほどのアリ塚は平たい形をしている。

そしてその名の通り、正確に南北を向いているのだ。こうすることで暑くなる日中は細い縁にしか陽が当たらないように工夫されている。

精巧な換気システムで塚の中はいつも一定の温度に保たれているという。

ほかにも、スズメバチや、ビーバー、サンゴといった比較的知られた動物の造る建築物も、あらためてじっくり見ると興味深い。

Posted by ろん