ペンギンが教えてくれた物理のはなし/渡辺 佑基
ペンギンがどういう方法で物理を教えてくれるのか?と思いつつ、ページをめくってみると、いつの間にか、そんなことは些細なこと?は忘れてしまった。
本書は、知られざるバイオロギングの世界について語られている。
ふつう人間が見る野生動物の姿は、彼らのごくごく一部に過ぎない。
ほとんどの時間、人間の見えないところで生活をしているわけで、それらを知るためには、動物たちに密着する必要があるが、当然ながら、そう簡単なことではない。
そこでバイオロギングの登場となる。
バイオロギングとは、野生動物にセンサーを取り付けて、行動に応じた周囲の状況を記録し、それを元に生態を調査・研究をすることだ。
機械の取り付けはもちろん、肝心のデータを回収するのは大変な苦労を伴う。
前述の通り、物理はあまり関係なくて、主にバイオロギングを通じて知り得た、さまざまな動物の生態、バイオロギングの仕組みや歴史などを紹介している。
読みやすい文体で、さらっと読める。
いちばん驚いたのは、小型の動物に取り付けるバイオロギング装置の一つ、ジオロケータ。
大きさは親指サイズで重さわずか3gほどの機械が、実に1年間もの記録ができるのだという。
あるたったひとつの事象を計測するだけで、位置が分かるというのだから、心底驚いた。
野生動物好きはもちろん、知的好奇心をくすぐられたい人など、誰でも楽しめる内容。おもしろかった。