4155 周囲への関心のなさが怖い
座れるのはときどきで、降車駅まで、座れないまま…ということはしょっちゅうだ。
この日も座れず、比較的車内は空いている場所に立ち、吊り手(吊り革)につかまっていた。
目の前の7人掛けの座席に座っていたのは、若い女性が3人(それぞれ他人)で、もし彼女たちが途中駅で降りたら、僕が座ろう…という算段だった。
僕の右側にも、若い女性が立っていた。
見れば、お腹をさすっている。妊婦だった。
目をつぶっているが、どことなく表情は冴えないように見えた。
これは憶測だけど、立っているのが苦しそうというほどではないが、座りたそう…そんな感じだった。
しかし…
目の前に座る、若い女性のうち2人は、ぞれぞれスマートフォンをいじっていた。もう1人は、目をつぶっていた。
もし僕が彼女たちの立場で座っていたら、間違いなく席を譲りたいと思う状況だったが、彼女たちは一向に気づかない。
ちらっと周囲を見渡すこともなく、とにかくひたすら内にこもっているという感じだった。
もし、僕が正義感を振りかざせば、座っている女性を蹴散らすところだが、当然ながら、そんな勇気もない。
せめて、彼女のうち誰かが立ったら、すかさず席を譲ろう…そう思いつつ、チャンスを狙っていた。
でも、こういう時に限って…と思ってしまうほど、まったく動きを見せない。
少し離れた席では、どんどん人の入れ替えがあって、そのたびに、妊婦はその光景をじっと見ていた。
ついに僕の降りる駅まで来てしまい、僕一人がその場を離れることになった。
彼女たちが、この状況に薄々気づいていたとしても、行動に出さないのであれば、無関心と同じこと。
よく電車や商業施設などで事件があっても、誰も助けてくれなかった…というニュースを聞く。
これは特別なことだと思いたかったが、もしかすると、この日、目の前に起きていたことの延長線上にある、ごく日常的なことなのかもしれないと思った。
周囲への関心のなさが、なんだかすごく怖い。