ヴァーチャル日本語 役割語の謎/金水 敏

何がきっかけだったか、急に気になって、図書館で取り寄せたのがこの本だった。

博士のような権威者が「わし」「○○じゃ」と言ってみたり、会社の上司が「今日中にやっていてくれたまえ」と言うシーン。

マンガや小説などの物語で見かけても違和感はないが、実際に、こういう人がいるかといえば、まず見たことがない。

なのに、それらしく聞こえてくるのはなぜだろう?

ふと疑問に思っていたら、この本が、まさにこの疑問に答えてくれそうだったので、早速読んでみた。

本書の中では、こうした言葉を「役割語」と呼び、誰がいつ作ったのか?なぜみんな知っているのか?そもそも何のために存在するのか?をさまざまな文献や資料をもとに解き明かしていく。

冒頭の博士や老人が使う役割語の起源は、江戸時代にまでさかのぼり、当時、年輩の多くが上方風の言葉遣いをしていたらしい。特に、医者や学者は言葉遣いが保守的で、古めかしい話し方が目立ったようだ。

それが、歌舞伎や演劇等で誇張されて描かれたという。時代を経て、子供向けに書かれた小説や漫画などでも、こうした役割語が使われることで、世代を越えて継承されたという。

それだけではない。物語などで、こうした役割語があることで、文字通り、その言葉を話す人物の役割が明確になる。と、同時に、読み手が必要以上に感情移入しなくなるという効果が期待できるという。

こうした役割語は、いわゆるステレオタイプ(その分類(カテゴリー)に属する人間が共通して持つと信じられている特徴)の言語表現として機能し、イメージだけで捉えることができるようになる。

これはとても便利な機能で、歌舞伎や小説、漫画、ラジオなど、役割語を使う人の”アイコン”として連綿と使われ続け、現在に至っている。

「〜だわ」、「〜ってよ」といった女性語、インチキ中国人をイメージする「〜アルヨ」といったアルヨ語(笑)など、言われてみれば、日本語には、さまざまない役割語がある。

さまざまな役割語の歴史を振り返ってみると、日本語の奥深さをあらためて実感できる。

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください