サプリメントの正体/田村 忠司
テレビの通販やネットでは、サプリメントの広告であふれている。
健康のために…
美容のために…
これ一錠で、これ1本で…
僕は、いっさい飲んでいないせいか、サプリメントの効能に対しては以前から、ちょっと斜に構えて見ていたが、この本を読んで、あらためて疑いが確信に変わるような気がした。
テレビ通販番組で紹介されるサプリメント…
一万円のサプリメントであれば、6000円がテレビ局、その残り4000円の半分の2000円が企画会社の取り分です。残ろ、つまりメーカーの取り分は2000円となります。(p.51)
想像していたとはいえ、メーカーの取り分の少なさには驚かされる。
さらには、品切れにならないように大量のロット数を要求され、残った在庫は、メーカー持ちになるから、肝心の商品の単価は下げざるを得なくなるという。
それでも、きちんとした商品だったらまだいいが、実際には、成分表通りに栄養素が入っているサプリメントの方が珍しく、たいていの場合は表記以下…という話に、多少想像していたとはいえ、軽いショックを受ける。
例として取り上げられていた、葉酸サプリメントにいたっては、味を付けるための甘味料や、日持ちをよくするための保存料、増量剤や成形のための賦形剤など、さまざまな添加物が使われ、“葉酸”サプリメントといいながら、実に、99.9%が添加物という状況になっている場合があるという。99%の添加物にお金を払っていると考えたら、そのショックは小さくない。
仮に、そういった必要成分が、“きちんと”入っていても、まだ問題はある。
そもそも、口から摂取して体内で働くかどうか?という問題だ。
たとえば、肌に効くとされる、コラーゲンのサプリメントは、せっかくコラーゲンを食べても、胃に届いたとき、胃液で分解されてアミノ酸に変わるだけで、期待される効果が現れるかどうか疑わしいという。
うーん…じゃあ、どうしたらいいのか?
本書は、サプリメントを製造販売している会社の代表によって書かれているが、内容は「安易にサプリメントに頼るな」というメッセージが込められている。
そして、本当に必要とされる栄養素は、ふつうに肉や魚、野菜で摂取すればよい…という、極めてまっとうなご意見には、納得しない理由はない。
そういった状況で、それでも、サプリメントを飲む意義とはなにか?
1.薬ではサポートしきれない「予防」
2.病気との因果関係がハッキリしない「不定愁訴」(怠いとか頭痛がするとか)
3.症状の根本原因に栄養不足がある場合
ということだった。前述のように通常の食事で必要な栄養を摂取するのが理想的だが、それが難しい場合に、サプリメントが必要となるわけだ。
それでも、もしひとつだけサプリメントがあるとしたら、どんなものを飲めば良いか?ということについて、著者のアドバイスは、すべての人に必要な栄養素である、「マルチビタミンとミネラル」ということだった。
ビタミンCだけとか、カルシウムだけといった、一種類の栄養素を意識してしまうと、必要となる栄養素が漏れたり、量が増えてしまうこともあるからだ。
サプリメントなんて…と思っていたけど、うまく利用すれば、健康に寄与することを考えれば、毛嫌いするのも、もったいないことなのかもしれない。
広告や宣伝に惑わされることなく、上手に利用していきたいものだ。
サプリメントについては、これまであまり縁のなかった世界ではあったが、サプリメント業界の“中の人”の話はリアリティがあって、興味深く、大変勉強になった。