3948 ロッポンギ…ヒビヤセン…
先日の雨が降り続く夜。
銀座線新橋駅のすぐそばを歩いていると、ある外国人男女2人組が、サラリーマンに何かを尋ねているのが見えた。
その後、2人は、駅出口の案内を見始めたので、まだ迷っているようだった。
「ヒビヤ…」
2人が話している声が聞こえた。日比谷に行きたいのだろうか?
僕は、外国人が困っているのを見かけたときは、できる限り声を掛けている。
「どうしましたか?」
もちろん?声を掛けるのは日本語だ。 だって、ここは日本だ。
たどたどしい日本語で、女性が話す。
「ロッポンギ…ヒビヤセン…ノリバ…?」
どうやら、さっきのサラリーマンが、六本木への行き方として、なぜか新橋駅に乗り入れていない日比谷線に乗るよう言ったようだ。
当然、間違ったことを教えられた外国人は困ってしまうだろう。
そこで、僕がさっと答えればいいわけだが、はたと困った。
新橋から六本木へはどうやって行くのが一番いいのだろう。
すぐに思いつかなかったのだ。
ふと、路線バスが一番手軽…という、外国人に勧める方法としては、ちょっと難易度の高い方法くらいしか思いつかなかった。
いま銀座線新橋駅にいるのだから、やはり銀座線を使いたい。
途中の青山一丁目駅で、都営大江戸線に乗り換えるという方法もあるが、割引があるとは言え、都営地下鉄分の運賃が余計に掛かるような乗り方(合計260円)は避けたい。
もっと最適な行き方があるはずだ…。
路線図を見よう…と、iPadを取り出そうとした。
「ソコマデシナクテイイデス」
外国人2人組は、iPadを片手に立ち尽くす僕を残し、立ち去ってしまった。
僕はとても悲しかった。
一人取り残されたことも悲しかったが、それ以上に悲しかったのは、すぐに最適なルートを思い出せなかったということだった。
ほんのちょっと、落ち着いて考えれば、すぐに思いついた。
銀座線で、いったん六本木とは“逆方向”の銀座駅に向かい、そこで日比谷線に乗り換えればよかったのだ。これなら初乗り160円で行くことができる。
果たして、あの外国人2人組は無事に六本木へ行くことができただろうか?