ルンルンを買っておうちに帰ろう/林 真理子

■文学・評論,龍的図書館

 

 

もちろん、著者の名前くらいは、よく知っていたが、この本を読むまで、実は…人となりはまったく知らなかった。

内容は、“自分暴露本”。

最近は芸能人ばかりでなく、本来素人であるはずの、ビッグ〇ディ、〇ミィなどの本も出回る世の中だが、30年ほど前に出版されたこの本は、その“走り”と言えるかもしれない。

「自分は嫉妬深い」、「独占欲が強い」とか「心底名声とお金が好き」…なんて書いてあるのを読むと、直接、面識ある人からしたら、ちょっと気まずくなることもあるんじゃないの?と余計な心配をしてしまう。

けれど、意外なほど、イヤな感じがしないのは、飾らず本音で書かれているが、かといって、非常識な人でもないからか?

これほどまでに、赤裸々な内容を書くことは、相当勇気がいるというか、よほど自分が強くないと難しい気がする…と思ったら、こんなことが書かれていた。

とにかく、私はぞんざいな口をきいたりすることが、個性的だとか、新しいとか思ってる女たちが大嫌いなのだ。なぜって、私は普通の服を着て、普通に黙っていても、みんなの中で絶対にいちばん目立つものをもっていると信じているもんね。(p.234)

彼女の力の源泉にあるのは、“常識”と“自信”…そして、どんなに苦しい状況にあっても、そのはねのける工夫だと思った。

実際、ごく普通に就職をしようと奮闘するものの、とにかく落ちまくったという。

そこで彼女は逆に、「不採用通知コレクション」してやろうという気持ちの切り替えをする(結局40通もの不採用通知を集めるが、就職までは至らなかったが)。

本書が出版されたとき、著者はなんと若干31歳。この貫禄は、なかなか真似はできないけど…。

あとがきの書かれた1982年(昭和57年)は、ホテルニュージャパン火災や、日本航空羽田沖墜落事故が立て続けに起き、東北上越新幹線の暫定開業など、小学生の僕でもインパクトのある年だったのを覚えている。

バブル前夜とも呼べる時期で、ところどころで、それなりに時代を感じさせるものの、人の生き方や考え方は普遍的なものなのだということを教えられたような気がした(…というと、ちょっと大袈裟かもしれないけど)。

Posted by ろん