それでも、自転車に乗りますか?/佐滝 剛弘

■交通,龍的図書館

佐滝 剛弘
祥伝社
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昨日、自転車で駅に向かう途中、いきなり横から高校生が飛び出してきた。

慌てて、急ブレーキを掛ける!

あとちょっとのところで、衝突するところだった。

高校生は、一時停止することなく、交差点に突っ込んできたのだ。

どんなに気をつけていても、事故が起きる可能性がある。背筋が寒くなった…。

最近、自転車にまつわるマナーや事故などが話題になっていたこともあって、先日、図書館でこの本を借りたのは、偶然だった。

ちょっとタイトルが刺激的。

でも、著者は、けっして自転車に対して否定的ではない。

むしろ、学生のころから自転車に親しみ、勤務先まで11kmの距離を40分も掛けて自転車で通う、最近の言葉で言えば、“自転車ツーキニスト”だ。

自転車を愛し、よく理解しているがゆえに、日本の自転車を取り巻く状況を憂いたタイトルなのかもしれない。

本書では、自転車を取り巻くさまざまな状況や、著者自身と家族が起こした自転車事故を通じて、自転車事故の加害者としての苦労や、自転車社会の先進事例などを紹介している。

そもそも、車両の一種であるはずの自転車が、「歩道を走ることができる」という特例が、問題をややこしくしている。先進国では例を見ないそうだ。

かといって、自転車の走行は、本来走るべき車道しか認めないというのも難しい。交通量の多い国道などを思い出せば、そう簡単ではないことは、容易に想像できる。

読み進めていくなかで、なかでも気になったのは、自転車事故の状況だ。

交通安全白書からの引用で、主な欧米諸国の状態別交通事故死者数の構成率が紹介されていたが、この構成比には驚かされた。

諸外国と比べて、圧倒的に歩行者と自転車の死亡率が高いのだ。自動車に比べて、歩行者と自転車が非常に弱い立場に置かれていることがわかる。

また、海外の先進事例で気になったのは、パリ市の取り組みだ。

20年ほど前まで、移動手段としての自転車がほとんど存在していなかったパリで、多数の自転車が見られるようになったのは、パリ市の運営する自転車の無人貸出システムによる効果らしい。

これは、自動車の慢性的な混雑を緩和する目的で、2007年、パリ市が積極的に自転車の活用を推進した「ヴェリブ」と呼ばれるシステムで、市内の約300mおきに、無人のレンタサイクルスペースを設置して、誰でも気軽に好きなところから借りて、好きなところで返すことができるようになっているという。

市内で8キロほどしかなかった自転車専用道が、いまでは600キロにも及んでいるという。

長い時間を掛けて普及した他の自転車先進都市と比べたら、非常に参考になる事例だろう。自転車で移動するという文化すらなかったパリでも、やろうと思えば、ここまでできるのだ。

翻って、日本ではどうか?

近年、ようやく自転車に対して、目が向けられるようになった気がするけど、よく見ると、単にマナーだけの問題で片付けられてる感がある。

もちろん、それも大事だけど、ろくに駐輪場がないのに取り締まりだけ強化したり、ちっとも自転車道が整備されていなかったり と、行政や住民たちの自転車に対する理解が高まらないと、なかなか変わらないかな…という気がした。

まずは、自己防衛かな…。

自動車事故よりも大変だったという、自転車事故の保険に入った方が良さそうな気がしてきた。

Posted by ろん