[社会の窓]琥珀色に輝く旅立ちの跡
朝から晩まで、セミがうるさい。
でも、彼らだって生きるために仕方なく?鳴いてるのだから、文句を言うのは失礼というものだろう。
昨日、図書館に向かう途中、林の脇を自転車で通り抜けた。
周囲は、もちろん騒々しい蝉時雨に包まれていた。
ふと目に止まったものがあった。
セミの抜け殻。
高さは地面から1メートルくらいのところだろうか。
とても小さいが、つる植物の先端にしっかりと止まっていたのですごく目立つ。
それにしても、よくぞこの高さまで登ってきたなと感心する。
何年もの間、地中で過ごしてきた一匹のセミが、地面から這い上がり、ここから旅立った跡だ。
よく見ると、とても複雑な形をしている。
こんなにじっくりと眺めたのは久しぶりかもしれない。
ふと、太陽の光が、セミの抜け殻に当たった。
すると、くすんだ茶色が、琥珀色に輝き始めたのだ。
抜け殻は、もう何の意味も持たない存在かもしれないけど、なぜかとてもいとおしく、大切なもののように思えてならなかった。