3869 1分弱のできごと
エレベータは、見知らぬ他人と乗り合わせる場所だ。
到着フロアまでの、十数秒から1分弱のあいだ、この狭い空間を共有する。
まさに一期一会。
エレベータの扉が閉まり、外部の喧噪が遮断され、ふと静かになる。
エレベータのカゴの位置を示すランプを見てる人…。
目をつぶって待つ人…。
一心不乱に携帯に文字入力してる人…。
わずかな時間、狭い世界ながら、さまざまな過ごし方がある。
その静寂が破られ、扉が開く。
目的のフロアだった人は、軽い会釈や「すみません」の言葉とともに、出ていく。
先日のこと。
扉付近には、若い女性が立っていたので、[開]ボタンを押して、その出ていく人を見守る。
逆に、このフロアからは乗ってくる人はいなかったようだ。
次の瞬間…。
僕が想像と、ほんのちょっと違った出来事が起きた。
ダ! ダ! ダ! ダ! ダ!
扉付近にいた若い女性が、やけに力強く[閉]押しボタンを連打したのだ。
まぁ、別に悪いことではないのだけど、その女性の雰囲気に似つかわしくない力強さに、ちょっと戸惑ったのだ。
全員が降りる1階に着いた。
さっきの様子を見た僕は、できるだけ急いで降りた。
なぜか、ちょっとドキドキしながら。