3806 企業に求められるものって?
ユニクロを展開するファーストリテイリングが、世界同一の賃金を導入する…と、新聞で大きく報道されていた。
そして、それに関連して、同社会長兼社長の柳井氏が、“ブラック企業”と呼ばれることに対する反論するのインタビュー記事(キャッシュ)が載っていた。
しかし、読めば読むほど、ますます違和感を覚えてしまった。
少々長くなるが引用する(「」内が柳井氏の回答)。
「将来は、年収1億円か100万円に分かれて、中間層が減っていく。仕事を通じて付加価値が付けられないと、低賃金で働く途上国の人の賃金にフラット化するので、年収100万円のほうになっていくのは仕方がない」
さらに続く。
付加価値をつけられなかった人が退職する、場合によってはうつになったりすると。
「そういうことだと思う。日本人にとっては厳しいかもしれないけれど。でも海外の人は全部、頑張っているわけだ」
社員が潰されていくことに対して、「海外の人は頑張っている」言い方に、強い違和感を覚えつつ…
売り上げを増やせ、その一方で残業はするな、では生身に人間は壊れませんか。
「生産性はもっと上げられる。押しつぶされたという人もいると思うが、将来、結婚して家庭を持つ、人よりよい生活がしたいのなら、賃金が上がらないとできない。技術や仕事がいまのままでいいとはならない。頑張らないと」
うーん…。
読んでまず思ったのは、ちっともブラック企業の反論になっていないじゃないかということだった。
いや、むしろ、社長兼会長自ら裏付けてしまってるように見える。
ユニクロ的なビジネスモデルの成功が、賃金が低く抑えられている現況という批判もありますが。
「それは原因と結果を逆にしての批判だ。安い労働力を活用し、製品価格をs挙げて売っているのは欧米のカジュアル衣料のH&MやGAP、中国の企業と同じだ」
ビジネスモデルが、H&MやGAPと同じだと言っても、じゃあそういった企業が、“ブラック企業”のような呼ばれ方をしているとは聞いたことがない。
たしかに、競争相手は世界にひしめいているのかもしれない。立ち止まることは、許されないのかもしれない。
でも、企業に求められているのは、そういうことだろうか?
企業は、収益を上げ“さえ”すればいいのだろうか?
その企業で働く社員は、もし自分が結婚して家庭を持ったり、人よりよい生活をしたいのだったら、生産性を極限まで高めろと。
そのために、たとえ精神状態に異常を来そうが、倒れ、潰され、辞めていくのは仕方がない…代わりはいくらでもいる…海外に目を向ければ、日本人じゃなくても…。
以前、書いた超短編小説のなかで、効率化を推し進めた会社の結末を書いた。
拙いオチではあったけど、ふとそれを思い出してしまった。
記事を読んで、暗澹たる気持ちになった一方、2年ちょっと前のプレスリリースに柳井氏は、もうちょっと人間味あることも言っていることもあるので、今回の記事から一方的に判断するのではなく、しばらくの間、発言の真意を見守りたいとも思った。