3757 第16回文化庁メディア芸術祭

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今年も、国立新美術館で文化庁メディア芸術祭が開催されている。

今回で第16回目だそうだ。

鑑賞したいイベントであるにもかかわらず、なぜか、これまで2年に1回のペースで見学(2009年2011年)している。

会期が10日あまりと短いせいか、ほとんど六本木あたりに用事がないせい?

会期が今週末まで、しかも午後、昼過ぎという時間ということもあって、やたらお客さんが多い。

気になった展示をいくつか紹介。

欲望のコード
巨大で真っ暗な部屋の正面に円形のスクリーン。そこにハニカム状の映像がめまぐるしく変わっていて、天井からはカメラとプロジェクターがいくつもぶら下がり、後ろの壁には先端にLEDのついた小型カメラがあちこちを映し出している。

過去と現在、会場と世界各地の映像が、複雑に交錯しながら、スクリーンに投影されているそうで、監視し監視されているという現代社会を表現しているようだ。

【Bye Buy】
「映像の世紀」の一場面を見ているかのような、古い映像。

いわゆる“古き良きアメリカ”を思わせる映像は、よく見るとかなりの違和感がある。それは、登場する人たちの目だけを拡大させる加工が施されているということだ。

人間の欲望を映像にするとこんな感じになってしまうのかも知れない。

【ほんの一辺】
東日本大震災で発生した瓦礫の山を実寸大で表現した。写真の上に油彩したということで、独特なインパクトがあった。

ここに見えるすべてのものには、かつて持ち主がいて、ごく普通の生活があったんだと思うと、ちょっと涙が出てきた。

【ハイスイノナサ「地下鉄の動態」】
各楽器の1音ごとの動きと質感に、四角や丸、三角といった幾何形体のアニメーションが「地下鉄」をイメージして動き回る。

タイトルを見なくても、「あっこれは地下鉄っぽい」とすぐにわかる。テンポのよさは、絶対音感ならぬ絶対に音感の悪い僕でもわかる気がする。

 

場所によっては、立ち止まるのも難しいくらいに混雑していた。

【ウダー】
初めて見たのは、テレビのタモリ倶楽部だった。

両手で挟み込むようにして演奏する電子楽器で、宇田さんが開発したから、ウダー

初めて触ったけど、やっぱり難しい。でも、なんかおもしろい。

宇田さんご本人が説明していたので、「売らないんですか?」と聞いたら、発売する予定はあるとのこと。

【勝手に入るゴミ箱】
紙くずを放り投げると、ゴミ箱自身が紙くずの落下地点まで動いてゴミ箱にストンと入る。

仕組みは、放り投げた紙くずをセンサーがキャッチ。3つのモーターを備えたゴミ箱に、落下地点を計算したコンピュータが指示、その場所まで移動させる。

連日のデモでゴミ箱の動きが悪くなり、ただでさえ“命中率”が低いのに、さらに悪化してしまっている…と、作者の方がお話しになっていた。それでもデモでは、何回かに1回は入って「おぉ」という声が上がった。

デモ終了後、直接作者の方に、このシステムの難しいところは?と尋ねたら、センサーの検知(精度)に限界がある…ということだった。たしかに、センサーについては自身で作ることができないなぁ…と納得。

【どうでもいいね!】
ひときわ賑わっていたのは、この展示だった。

Facebookの「いいね!」ボタンを押すのが煩わしい方向けに、画面に見えているすべてのニュースフィードに「いいね!」を押してしまうGoogle Chromeの拡張(アドオン)だ。

これも作られたご本人がデモというか説明をしていたが、半分くらい「どうでもいい」説明をして、鑑賞者を煙に巻いていた。

念のため、公式の贈賞理由を引用してみると…

ありとあらゆるページにFacebookの「いいね!」ボタンが配置され、皆がこぞって「いいね!」数を競い合う、この2010年以降のウェブの状況に対する一種の批評とも受け取れる。その一方で、Google Chrome拡張ボタン(および対象となる「いいね!」ボタンたち)に仕込まれたスクリプトたちが健気に動作している様子は、なかなかに味わい深い佇まいを帯びている。伝統的なハックマナーに則りつつも、単なる批評には括りきれない豊かさがある。

いろいろ考えさせられる“作品”だった。

なぜか、どうでもいいね!シールが配られ、作者のインターネットおじさんに、そのシールを貼って!ということだったので、ダミーと一緒に貼らせてもらった。

メディア芸術祭は、アート部門、エンターテイメント部門、マンガ部門、アニメーション部門に分かれているが、マンガ部門、アニメーション部門については、ちょっと取っつきにくい感じがしたので、軽く鑑賞して、開場を後にした。

この国立新美術館は、来るたびにその建物自体の存在感や、空間の大胆な使い方には圧倒されてしまう。

ちょっと時間があったので、館内をウロウロして、光と影の具合を眺めてみた。

 

当然ながら、その外観にも圧倒される。

おそるべし黒川紀章。

国立新美術館があった場所は、かつて、二・二六事件ゆかりの旧歩兵第三連隊兵舎で、戦後はは東京大学生産技術研究所等として使われた建物が建っていた。

大部分が取り壊されてしまい、ほんの気持ちばかり残された別館を見ると、残されたことはよかったけど、もうちょっといい残し方はなかったのかなぁ…という気持ちにもなった。

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