ファミリーレストラン 「外食」の近現代史/今 柊二

■たべもの,龍的図書館

今 柊二
光文社 (2013-01-17)
売り上げランキング: 27,093

実家の自宅近所になかったこともあって、幼いころの“ファミリーレストラン”の思い出はあまりないが、外に食べに行くというのは、やはり特別な時間であった。

本書は、8章のうち、3章がファミリーレストラン誕生に至るまでの歴史を紹介。“ファミレス前史”が3分の1ほど続く。

ちょっと長いな…とも思ったが、歴史を知っておくことでファミリーレストランをより深く知ることができような気がした。

そもそも、外で食事をするということ自体がかなり特別なことで、それが徐々に一般に広まっていくことで、ファミレス誕生の素地ができてくる。

福岡で、ロイヤルが機内食、空港のレストラン、そして福岡市内にフランス料理のレストランをオープンしている。

1970年の大阪万博で4店舗のレストランを出店したロイヤルは、セントラルキッチンを用意し、膨大な需要にこたえる仕組みを確立、1971年に「ロイヤルホスト」1号店を北九州市にオープンさせる。

ひばりが丘で食品スーパーを展開していたことぶき食品が、新たな事業として注目したのが、外食産業だった。

当初マクドナルドとの提携を狙ったが折り合いが付かず断念、1960年代後半、アメリカでは、コーヒーショップが人気を集めていたことに着目し、1970年“コーヒーショップ スカイラーク”を始めることになる。

その後、住宅地で展開するにはコーヒーショップは馴染まないと、“ファミリーレストラン”と銘打ち、広報資料等で使われていくことになったそうだ。

呼び出しベルやドリンクバーといった、ファミリーレストランには必須のアイテムは、すかいらーくで誕生している。

もしすかいらーくがマクドナルドと提携していたら、現在のファミリーレストランはなかったかもしれない…と思うと、不思議な感じがする。

人々の所得が増え、自家用車が普及し、ゆとりが生まれる一方で、さまざまな需要に応えることのできる仕掛けやノウハウが蓄積したことで、ファミリーレストランが一気に広まっていく。

ちょっと背伸びすれば、手の届くレストランは、人々にとって、“身近な非日常空間”だった。

さらに一般化してくると、徐々に日常的な空間になってしまう。

その結果、すかいらーくは、すかいらーくのままでいることが許されなくなり、ガストへの転換を余儀なくされる。

低価格化や、専門店化が進められ、2009年には、すかいらーくブランドは消滅してしまう。

ちなみに、近所にあったすかいらーくは、グラッチェガーデンズに変わった。

この本で、以前から、ちょっと気になっていた疑問が解消した。

なぜジョナサンのロゴには、「Coffee & Restaurant」と、わざわざコーヒーの文字が書かれいるのか?ということだった。

先述のとおり、1960年代後半のアメリカで、コーヒーショップが人気を集めていたころ、なかでも、サンボズ社は隆盛を極めていた。すかいらーくは、そのサンボズ社と提携し、共同出資まで行って日本で展開する予定だったものが、なんと、サンボズ社が倒産してしまう。
その結果、急遽、独自ブランドで展開することになったのが、現在のジョナサンだそうだ。
なるほど、それで、そのコンセプトを引き継ぎ、「Coffee & Restaurant」となっているのだ。

なんだか本の紹介ではなくて、ファミリーレストランの歴史そのものの話になってしまった…。

本書の章と章のあいだに、たくさんの実際にあちこちのファミレスで食べ歩いたコラムが載っていて、肩肘張らない、気楽に読める内容となっている。

 

Posted by ろん