3645 恐怖の水平歩道
水平歩道は、欅平から仙人谷まで、黒部川に沿って延びる登山道で、仙人谷ダム建設のときには、資材輸送路としても使われたという。
登山道なのに水平というのも、ちょっと不思議な気がするが、この黒部峡谷は、ほぼ垂直に切り立った崖がずっと続くために、人間が歩けるようなところは一切ない。
そのために、ある意味、“強引”に切り開いた道なのだ。
黒部を語る上で、欠かすことのできない、この登山道をぜひ見てみたい…と思い、欅平駅に着いてすぐ、水平歩道に向かって歩き始めた。
登山口はすぐにわかった。
しかし、想像以上に急な斜面。水平歩道までは、けっこう簡単に行けるものだと思い込んでたために、しんどかった。
けど、見応えのある景色は、疲れを一瞬忘れさせてくれた。
いまが一番きれいなときなのだろう。
濃い黄色が印象的。
なんとなくだけど、黒部の紅葉は、黄色が多いような気がする。
生育している木の種類によるのかな?
ようやく、水平歩道の始・終点の案内版の前にたどり着く。
簡単に来られるようなところではないので、なんとしてでも、ここまでは来たかったのだ。
40分足らずで着いてしまったので、あらかじめ帰る時間を決めて、慌てないで注意深く歩くと自分に課して、水平歩道を歩くことにした。
最初は、とくにこれまでとあまり変わらない登山道だったが、いきなり、崖を沿うような道に変わった。
いよいよ、水平歩道らしくなってきた。山側に掴まれるワイヤーがあるものの、崖側には柵やロープなどの転落防止対策は取られていない。
晴れていれば、きっと見事な紅葉の風景だっただろう。
どんよりとした曇り空だ。
山の向こうからやってくる送電線は、明日向かう黒部川第四発電所からのものだろうか?
岩盤をくりぬいたような道もあったし、そもそも道がないために、岩に鉄の棒をさしてその上に板を敷いて、道にしたり…と、なんともおっかない。
水平歩道は、まだ始まったばかりで、もっと恐いところはこの先にたくさんあるはず…。
しかし、水平歩道は、10km以上あって、どこか適当なところで戻らないとキリがない。
それに、装備も完璧ではなかったこともあり、ちょっとくたびれてきた。
とりあえず、目に入った鉄塔の下で折り返すことにした。
いま歩いてきた道を戻るだけだから、さっさと戻れるかと思ったら…
見る方向が変わっただけで、全然違う雰囲気に感じられた。
あらためて見るとやっぱり恐い。
さっきまでパラパラ降っていた雨が、だんだんと強くなってきた。
こんなとき、慌てて、足を滑らせてしまうのではないかと、警戒しながら歩くものの、少し疲れているせいか、足が思うように上がらず、躓いてしまうこともけっこうあった。
そして、行きと時間とほぼ同じくらいの時間で、欅平駅前に戻ってきた。
全行程は1時間ちょっとということになる。
雨は強くなる一方だ。
あの赤い橋を渡って、今晩泊まる名剣温泉に向かう。
その向かう道では、落石を警告する案内と、ヘルメットも設置されていた。
それくらい危険というのだけど、周囲にたくさん人がいたら、かぶるのはちょっと勇気がいる気もした。
雨がかなり強めに降ってきたが、人食い岩という、やはり人工的にくりぬいた道路のおかげで、あまり濡れずに済んだ。
人食い岩を通り過ぎてちょっと言ったところに、今晩お世話になる名剣温泉が見えてくる。
おつかれさまでした。→自分
明日は、いよいよ、黒部ルート見学会だ。
つづく