3625 iPS臨床治療の虚偽騒ぎで感じたこと
iPS細胞の開発で、ノーベル 医学生理学賞という、大変おめでたいニュースに続いて、iPS細胞を使って世界初の臨床治療をしたという虚偽騒ぎ(Web魚拓によるキャッシュ)。
そもそも、この男の言動は、誰得(誰が得するんだよ?)的な行動であり、記者会見のグダグダを見れば、人物的にはどうでもいい男なのだということはよくわかる。
それ以上でもそれ以下でもないので、嘘とわかったのなら、これ以上騒いでも意味がないんじゃないかと思った。
それよりも、気になったのは、もとはと言えば、この男をスクープのように大きく取り上げてしまった新聞社の姿勢だろう。
素人の僕ですら、違和感を覚えたこのニュース。
積み重ねが重要な医療の分野で、唐突に“持ち込まれた”ことにどうして疑問を感じなかったのか?
なぜ、取材の内容が正しいと判断できる証拠を集める、裏取りをしなかったのか?
読売新聞は検証記事を載せている(Web魚拓によるキャッシュ)。
再生医療の第一人者である大学教授に森口氏の論文草稿について意見を聞いたところ、「本当に行われたのなら、6か月も生存しているというのは驚きだ」とのコメントを得た。こうした取材を踏まえて9日昼、担当次長が部長に概要を説明。部長は記者に「物証は十分か」と確認したうえ、できるだけ早い掲載を指示した。
たしかに、再生医療の第一人者である大学教授に尋ねており、その回答も得ている。
しかし、注目したいのは、回答はあくまでも、「本当に行われたのなら」であり、ちっとも裏取りになっていない。
なぜならこれは、いかにも、学者らしい回答であり、本当であるという証明になっていないからだ。
学者は、自身がきちんと検証できないことに対しては、断定をしない。
逆に言えば、可能性ががわずかでもあることならば、完全に否定もしない。
そのため、この男の主張を確認できない限りは、本当だとも嘘だとも言えず、このような回答になってしまう。
だから、この回答を、「本当だ」と思いながら聞くと、誤った解釈をしてしまうことになる。
そもそも、「本当ならすごい」という程度のコメントなら、学者でなくても素人だってできる。
読売新聞は、調査を続ける(Web魚拓によるキャッシュ)としているが…
私たちはそれを見抜けなかった取材の甘さを率直に反省し、記者の専門知識をさらに高める努力をしていきます。
厳しい言い方をすれば、こんなことは、専門知識というより、一般常識だと思う。
僕が深刻だと思ったのは、記者個人の問題ではなく、新聞社という組織が、嘘を見抜けず、そのままニュースとして流れてしまったということだ。
もうこの男のことはどうでもいいので、読売新聞の猛省を促したい。