尼さんはつらいよ/勝本 華蓮
尼さんはつらいよ (新潮新書)
勝本 華蓮
新潮社
尼さんという言葉から連想されるのは、Googleで“尼”と画像検索したイメージそのものだ。
しかし現実は、必ずしもそうではないらしい…というより、そうしたイメージ通りの尼さんは、ほとんどいないという。
精進料理の食材の野菜は、なんと冷凍のミックスベジタブル、ゴミ屋敷同然の部屋、飼い猫の蚤が飛び回る寺での生活。躾がまったくなってない行儀の悪い尼僧、押しつけられる仕事と言えば、掃除、食事の支度、来客の接待…まるで、住み込み家政婦のような生活…
前半は、著者の半生記といった感じで、格式ある尼寺で体験したとんでもない経験が紹介され、後半は著者が見聞きした尼さんの話となっている。
寺の子として生まれたのならともかく、結婚した相手がたまたまお坊さんだった場合、いろいろ問題があるようだ。
一般の家庭ですら、いざこざがあるのだから、代々の後継ぎを考えなければならないお寺なら、なおさらのことだ。
そもそも、お坊さんが結婚するのは、世界の仏教国では、珍しいことのようで、日本のように、お坊さんが結婚するのは、モンゴル、ネパール、チベットの少数の一部、日本の統治時代に影響を受けた韓国の一部の宗派のみだそうだ。
このことから見ても、日本の仏教は、世界から見て、ちょっと異質なのかもしれない。
閉鎖的な世界だから、それなりにいろいろなことがある。
しかし、時代が変わり、寺に対する考え方も変わってくると、おのずと寺も変わらざるを得ないし、尼さんも変わらざるを得ないだろう。
知られざる世界を垣間見えたのは、おもしろかったが、ドロドロというか、ひどい話が多く、読後感はあまり清々しいものではなかった。