黒部の太陽/木本 正次

■建築・都市, ■文学・評論, 龍的図書館

黒部の太陽
木本 正次

信濃毎日新聞社

 

3,000m級の山々に囲まれた黒部峡谷は、古来よりその険しさから人間の立ち入りを拒む一方で、雪解け水が豊富で、ダムを建設するにはとても魅力的な地域とされてきた。

そのため、ダム建設は戦前から始まり、柳河原発電所、黒部川第二発電所、黒部川第三発電所と次々と作られ、黒部川第四発電所についても、戦前にはすでに計画はあったという。

“黒部ダム”とか“黒四発電所”といえば、少し前に、NHKプロジェクトXや、紅白歌合戦で中島みゆきが歌った場所としても話題になった。

この本を読むきっかけになったのは、もちろん先日の夏休みの旅行だった。

これらの建設を描いた石原裕次郎主演映画「黒部の太陽」、そしてその原作で、今回読んだ小説「黒部の太陽」も、よく知られているが、そもそも根本的な部分を、僕は、実は、この本を読むまで理解できていなかった。

この物語は、「黒部川第四発電所」を建設するための、「黒部ダム」を建設するための、さらにその資材を運び入れるための「大町トンネル」を建設の話なのだ。

そもそもダムのすぐそばに発電所があると誤解していたのは、ダム好きを自称している立場としては大変に恥ずかしい。

話がずれた。

とにかく、ダムを造るということは、非常に手間の掛かるもので、さらに過酷な自然が相手ともなると、人間の力はあまりにもちっぽけだ。

しかし、人間が、強い意志と団結力を持つと、その力は結実するということをこの話を読んで、実感した。

かなりベタな表現だけど。

物語は、黒四プロジェクトの建設事務所次長となる主人公芳賀が、1日でも早く貫通させたい大町トンネルで直面した大破砕帯を前に工事がまったく進まないという危機的状況と、芳賀の家族や衰弱する病気の娘への気持ちが錯綜し、胸が詰まる思いがする。

大破砕帯での異常出水で進捗しない工事、増大する費用は、関西電力の経営をも圧迫しかねなかった。

171人もの尊い命をと引き替えに7年もの歳月を費やし、1963年に完成する。

ダム・発電所建設を、精神的に支えたのは、当時電力不足に悩まされた日本において、なんとしてでも、電気を供給したいという関西電力社長をはじめ社員たち、協力会社の熱い思いだった。

竣工からもうすぐ50年。

電力会社が、安定的に電気を供給しようという、本質的な部分は、当時も、いまも変わらないはずである。

たとえ、それが水力発電であろうと、原子力発電であろうと。

でも、やっぱり違和感が…どこかで、道を誤ってしまったような気がしてならない。

Posted by ろん