3556 道案内
意識しなくても、つい聞こえてしまうことがある。
その内容が、「本当にそんなこと言ったの?」と思えることがあっても、話をしている相手ではないから、確認することもできずに、悶々と気になることがある。
この前の日曜日、図書館からの帰り道、歩道に2人の女性が立ち話をしているような姿を見掛けた。
大きめの帽子をかぶりおしゃれな感じの服装をした女性が、このあたりに住んでいるであろう普段着姿の中年の女性に、道を尋ねているようだった。
僕はその横を通り抜けようとしたとき、2人の会話が耳に入った。
場所を聞いた中年の女性が、指を差しながら、道を教えるところだった。
「あの、白いすてきなマンションの前を通って…」
え?
すてきなマンション?
道を教えるという点では、まったくの不要な情報ではあるが、この道を教える女性にしてみたら、これはすてきなマンションに見えるのだろう。
道を尋ねた人は、これをどう感じ取ったか分からないが、妙に印象に残る会話だった。