ヘルプ 心がつなぐストーリー/キャスリン・ストケット

■文学・評論, 龍的図書館

ヘルプ (上) 心がつなぐストーリー
ヘルプ (下) 心がつなぐストーリー
キャスリン・ストケット

集英社

 

舞台は、人種差別の激しかった、1960年前半のアメリカ南部。

ジャーナリストを目指す主人公スキーターは、自分を売り込む作品の題材として、黒人メイド(=ヘルプ)の実情を伝えるノンフィクションを思いつく。

かつて、アメリカの人種差別は、かなり激しかった聞いたことがあるが、知っているのはその程度で、詳しいことはまったく知らなかった。

だから、上流階級の白人家庭では、黒人のメイドにあらゆる家事を任せたり、白人の子供は黒人のメイドに育てられることが多かったという事実にとまどいを覚えた。

激しい人種差別は、白人と黒人があらゆる点で完全に隔てられているのだとばかり思いこんでいたからだ。

もちろん、噴水式水飲み器、映画館、野球場、電話ボックス、トイレなど、あらゆる施設や設備が、黒人用と白人用に分かれていたというが、白人家庭の暮らしに、黒人が密接に関わりを持つことがあれば、人種差別がいかに愚かなことであるか、気付く人たちも出てくるだろう。

これは、まさに、そういったことに気付き、行動を起こした人たちの話だ。

フィクションではあるが、著者の経験がふんだんに盛り込まれているため、黒人ヘルプたちの生の声が満載の本が、本当に出版されるような気がしてくる。

現在でも、人種差別による事件が起きるが、当時は、それが当たり前の世の中であり、黒人ヘルプたちは、これは自分たちの定められた運命だと思いながら、懸命に生きていた。

スキーターは、自分の夢の実現に向け奔走するが、白人である彼女が、黒人ヘルプたちに心を許してもらうのは、大変なことだった。

読んでいて思ったのは、“病気が感染する”と言ってトイレですら別棟に作ってしまうほど差別しているはずの黒人メイドに家事を任せ、白人の子供の育児を任せていたり、目の前の問題に目を向けず、遠く離れたアフリカの子供たちを救おうと慈善パーティーを開いたり…と、人種差別は、そうした矛盾の上に成り立っていたのだということだった。

そうした矛盾を、“おかしい”と感じ、それを正すきっかけを作るべく、人種を越えて行動する過程は、はらはらドキドキ、笑いあり、涙あり…で、ふだんあまり読まない、海外の小説でかなり楽しむことができた。

本書とは関係ないが、海外の小説でいつも困るのは、外国人の名前が、なかなか覚えられないということだ。

だから、いつも、なかなか読み進められない。

本書では、主な登場人物が冒頭で一覧になっているのがありがたかった。