ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業(上・下)/マイケル サンデル
ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業(上)
マイケル サンデル
早川書房
ハーバード大学のマイケルサンデル教授の講義が、あまりの人気ぶりから、非公開とされてきた講義が、一般に公開されたという。
そんな、ベストセラーとなった「これから正義の話をしよう」は、以前から知ってはいたが、関連するテレビも見たことはなかった。
先日、なにげなく図書館の中を歩いていたら、たまたま見掛けて、手に取ったのだった。
評判通り、とてもおもしろかった。
ブレーキの効かない暴走する路面電車。自分の選択によって、5人か、1人か、どちらかを確実にひき殺してしまう状況で、その進路をどちらに向けるか?という問い。
ふつうの路面電車は、車のようなハンドルがあるわけではなく、走行中に運転士の意思で進行方向を決定することはできないので、そもそもの例題に誤りがあるのだけど、それは置いておいて…。
救命ボートの上で、誰も助けに来てくれないという絶体絶命の状況において、生きるため余命が長くない同乗する仲間を殺すことは許されるかどうか?
こういった、非常に悩ましい例題が次々と挙げられ、学生たちを悩ませる。
当然なのだろうけど、議論を進めていくためには、強力なファシリテーターがいるかどうかが、とても重要なのだということを、あらためて思った。
もちろん、ハーバード大学の学生のような議論に参加しているメンバーの関わり方も重要なのだけど。
難しい話もあるが、サンデル教授の、ジョークを交えた分かりやすい話に引き込まれる。
本書のタイトル通り、“講義録”なので、実際の講義のような対話形式になっている。
意見を述べた学生に対して、できるかぎり名前を聞いて、教授の方からその名前で呼びかけたり、解答に対して褒めたり、解答から議論を深めたり…と、臨場感がある。
きちんと問題に直視し、理屈で物事を考えていく楽しさを教えてくれたような気がする。