2円で刑務所、5億で執行猶予/浜井浩一
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2円で刑務所、5億で執行猶予 (光文社新書) 浜井浩一 光文社 2009-10-16 |
タイトルに惹かれて手に取った。
たしかに、つまらない理由で懲役刑になる人がいるかと思えば、かなり大きな問題を起こしたにもかかわらず、執行猶予の判決を見聞きし、憤りを感じることがある。
きっと、この本もそんなことが書かれているんじゃないかと思ったら、ちょっと違った。
犯罪にまつわるさまざまな間違った常識を紹介していて、とても興味深い。
いま、凶悪犯罪は減少の一途をたどっているにもかかわらず、むしろ治安が悪化していると考えている人が増えている。そして、たびたび問題になる少年犯罪よりも、むしろ高齢者の犯罪の方が急増しているという事実。
振り込め詐欺をはじめとした高齢者の犯罪被害が問題になっているが、実際に犯罪に這う確率が高いのは、圧倒的に若年層でありこの傾向は、ここ何年も変わっていないという事実。
このあたりは、僕も聞いたことがあったが、かなり衝撃的だったのは、再犯防止のプログラムが効果がないばかりでなく、むしろ逆効果になるという研究結果が出ているという話だった。
これは、保護観察処分中の非行少年たちに、反面教師として、実際に、受刑者の過酷な刑務所生活を見せたり、経験させるなどのプログラムを経験させるこどで、もう二度と犯罪行為を起こさないようにするというものだが、決して特別なものではなく、ありそうなものだが…
研究の結果、こういったプログラムを経験させると、なんと逆効果となり、むしろ再犯率が上がってしまうというのだ。
はっきりした原因は分かっていないようだが、紛れもない事実である。
多くの場合、犯罪は起きるものと考えて、そういった犯罪に遭わないようにするにはどうしたらいいか?ということが、話題の中心になりがちだ。
著者は、犯罪者の更生を専門としてるというだけあって、いかに犯罪をさせないようにするか?という立場であり、僕にはちょっと新鮮に映った。
勝手な思い込みによって、期待したことと逆の結果を招いてしまうということが、起きているのだ。
これは、日頃の自分の考えや仕事でもありがちで、いろいろ考えさせられた。
なお、気になる、本書のタイトル…編集者の助言によって決まったと、本書のはじめににも書かれていたが、5億で執行猶予となった判決については、著者は、むしろ評価しているという。
ちなみに、5億で執行猶予を指していた裁判は、某大物音楽プロデューサーが起こした詐欺事件で出た判決のことだった。
著者が言いたかったのは、そちらのことではなく、少額の無銭飲食や万引き犯が実刑にならないような、何らかの支援の仕組みが必要だということだった。
まだまだ紹介したい話があるが、長くなるのでこのへんで。
ふと、以前、タイトルに惹かれて手に取った本の内容がひどく、イヤな思いをしたことを思い出したが、この本は違った。このタイトルだから、実際に手に取ったし、新しい知識も得られた。
そう思うと、ちょっと複雑な気分。