「嫌消費」世代の研究/松田 久一

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「嫌消費」世代の研究――経済を揺るがす「欲しがらない」若者たち 「嫌消費」世代の研究――経済を揺るがす「欲しがらない」若者たち
松田 久一
東洋経済新報社 2009-11-13
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「お年寄りが弱者」というステレオタイプ的な見方は、そろそろ考え直すときが来たのではないか?…と強く感じたのは、医療制度改革の一環として制定された“後期高齢者医療制度”が「高齢者いじめ」「姥捨て山」といった論調で批判されていたときだった。

では、その負担は誰がするのか?という議論は置き去りにされていた。実は、みんなそのことは薄々感じているはずなのに、負担はたらい回しにされた。結局、解決策は見えず、増える一方の負担は、結局、国債などで“未来へのツケ”という形で問題は先送りされてしまう。

未来へのツケ…つまりそれは“若者の負担”に他ならない。

たとえば、60年償還の日本国債というのは、いまの借金が60年後にツケを払うわけで、未来に使えたであろう資源を前取りし先食いしてしまっているのだ。いまの若者ばかりでなく、さらにその先の若者にも重く負担がのしかかる。

いかにいまの高齢者が厚遇されているか?という事実が“これでもか!”というくらい紹介されている。薄々知っていたこともあるが、きちんと金額で表現されると、ちょっとビックリする。

税金や社会保険、介護保険が収入から引かれ、さまざまな形で高齢者に回っている。

特に、社会保険料は、住民税や所得税よりずっと重い。生涯の年収平均800万円の人が35年間、社会保険料を払い続けたとすると、その額はなんと4000万円以上。これが高齢者のために使われているのだ。

当然、これは将来自分が受け取るであろう年金分も制度上含まれている…ということになっているが、自分が支払った分のお金が戻ってこないだろう…というは、もはや暗黙の了解レベルではなく、常識ともいえるほどだ。

高齢者が受け取る年金額と現在の若年層の受け取る予定の年金額に大きな差があることは明白で大きな問題になっているが、そもそもこんな制度を作ってきたのは、受け取る世代の人たちだ。自分たちに有利で、自分たちにお金が回るような仕組み…つまり、ネズミ講に近いと著者は言う。

「頭のいいヤツが自分に都合のいいルールを作り、頭の悪いヤツはそれに従うだけ」…みたいな台詞を、ドラマ「ドラゴン桜」で言っていたのを思いだした。

まさにいまのこの状況をよく表していると思った。

当然ながら、とても難しい問題で、一朝一夕になんとかなるわけはないけど、せめて若年層の中でも、もっとこの事実を意識する人たちが増えてくれることを望みたい。

本書では、少々過激な表現も飛び出すが、現状を憂うがあまりの発言であり、この本を読むことで、未来について少し考えてもらうきっかけになるといいと思う。