六本木六丁目残影/伊藤 照彦

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六本木六丁目残影 伊藤照彦写真集―あの家並みあの坂道1992‐2000 (Bee books) 六本木六丁目残影 伊藤照彦写真集―あの家並みあの坂道1992‐2000 (Bee books)

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六本木ヒルズが竣工してから、もう7年がたった。

私用ではほとんど用事はなかったが、4~5年ほど前は、仕事で行く機会は多かった。

六本木ヒルズに行くと、どこか晴れがましい気持ちになる一方で、ちょっと浮いたような、どこか落ち着かない…自分には合ってない感じがしてならず、何度行っても慣れなかった。

六本木ヒルズに行って、時間があったときには、よく付近を散策した。

そのとき、六本木ヒルズ周辺には、まだまだ民家や緑も多く古い街並みが残されていたことに気づいたのだ。

実は、そこでみた光景は、かつて六本木ヒルズができる前の、六本木六丁目の光景に近かったのかもしれない。

この写真集は、六本木ヒルズができる前の1992年から2000年までの風景を捉えたもので、いま、たくさんの観光客やビジネスマンが行き交うこの場所が、こんな風景だったとは…と思わせる、貴重な写真が多数載っている。

たった十数年前の風景。

ここに写っている風景が跡形もなく消滅した…と表現するとかなり強いインパクトがあるが、実際そうなのだ。

それはまるでダムができて水没してしまったような。

実際、六本木六丁目は、谷間にできた住宅密集地帯で、防災上の問題をはらんでいた。再開発に当たって、この谷間を埋め立てて、そこに六本木ヒルズが作られた…というのは、あるテレビ番組で知った。決して“ヒル”(丘)というわけではなかったのだ。

この写真集、やたらと、テレビ朝日の写真が多いなと思ったら、著者はテレビ朝日の元社員の方だった。

写真を写した範囲を示す航空写真が巻頭に載っていたが、できれば、写真がどの位置から撮られたのかを示してくれれば、現在と対比できてとてもおもしろかっただろうと思う。