2864 ある会社の話(フィクション)
質素な役員会議室に、会社の幹部たちが渋い顔をして集まっている。
会社の赤字が小さくなるどころか、その額は大きくなる一方だったからだ。
コスト削減は、役員たちにとって、社長からの至上命題だったから、もうなりふり構わず、思いつく限りの作戦をとることにした。
まず、会社の利益に直接関わらない間接部門は、すべて外部の会社に委託することにして、それに関わっていた社員たちを全員削減した。
また単純な事務作業を賃金の安い海外に業務を移した。
その一方、早期退職制度によって正社員の大部分が会社を去ってしまったため、社員がいなくてもアルバイトだけで仕事が回るような仕組みを作ることにした。
客からの注文をインターネットで自動で受付、それを自動的にメーカーに発注するシステムを構築した。コンピュータが全自動でコントロールする画期的なシステムだ。
おかげで、社員やアルバイトを全員削減することができた。
すべての手を尽くしたとき、幹部たちは、自らの辞表とともに社長に進言した。
「社長、コスト削減のため、会社を辞めてください」
そして、会社から誰もいなくなった。
もちろん、これはフィクション。突き詰めていくと、こんなこともあり得てしまうんじゃないかって、ふと思ったことを文章にしてみました。