線の冒険 デザインの事件簿/松田 行正

■芸術・デザイン,龍的図書館

4046216530 線の冒険 デザインの事件簿
角川学芸出版 2009-06-13

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ふだん“線”というものがあまりにありふれていて、“デザイン”とも思えないが、本書では、その線が主役だ。“線”にまつわるあらゆるエピソードで、日本と世界、過去から現在を考察していく。

子午線からメートル法が決まるまでの話からはじまって、魔方陣の話、線を組み合わせたということから、ヒエログリフや地図記号の話、線の集合体とも言えるエッフェル塔の誕生秘話や東京タワーの話…そして、線といえば、列車のダイヤグラムについても、もちろん触れられていた。

これらが線にとっての“明”の部分だとしたら、逆の面についても、もちろん取り上げられている。

前小口部分を斜めにすると東京タワーの絵が現れる。逆はエッフェル塔。

真珠湾攻撃からわずか4ヶ月後の1942年4月18日に、アメリカが日本本土を直接攻撃したなんていう史実は、どれだけの人が知ってるのかわからないが、その飛行機の軌跡や、逆に日本がアメリカに放った風船爆弾の軌跡、一進一退した朝鮮戦争の最前線の動き、やはり線の組み合わせである、ナチスの鉤十字“ハーケンクロイツ”の話など、“暗”についても書かれている。

なかには、線によって二分するという理由からか、ヒトの去勢の話といった、あまり見聞きしないような話題まで、これらが1冊の本にまとまっているということが不思議なくらい、話題は、さまざまなジャンルにわたっている。

著者の見聞の広さを感じさせた。

ただ、東京の地下の様子を取り上げた箇所で、トンデモ本として有名な「『帝都東京・隠された地下網のヒミツ』という本に詳しい」という注釈は残念だった。参考にするべき本を間違えている。

人類がこの世に誕生して以来、線とともに生きてきたと言っても過言ではない。たかが線、されど線だ。

読み終えてみて、まさに線を通じて、冒険した気分になったし、知的好奇心を満たされたと思う。ただ、サブタイトルのような“デザイン”に関する話題はあまり豊富ではない気がした。

読み応えがあったが、読むのにかなり時間が掛かった。

本の前小口(開くところ)を斜めにすると東京タワーの絵が現れる。逆はエッフェル塔になっているのもおもしろい。