2675 ルネ・ラリック展

芸術・デザイン

以前、東京庭園美術館で、はじめて“ルネ・ラリック”という人物を知り、それをきっかけに、今年2月に箱根ラリック美術館に行ったということもあって、ルネ・ラリックにはちょっと関心がある。

今日は、国立新美術館で開かれている「ルネ・ラリック展」に行ってきた。

会場入口
会場入口

入口から、入ってすぐのところに「二羽の雀とバラ」という扇が、たった一つだけ展示されていたのが印象的だった。これは、ラリックの初期のもので、その後の活躍を予感させる作品だったからだろう。

会場はとても広く、アール・ヌーヴォーのジュエリー制作者から、アール・デコのガラス工芸家への変化をたどる展示だった。

初期の宝飾品として、ペンダントやブローチ、ネックレスのモチーフには、スミレやパンジー、ナデシコといった花から、枯れ葉といった植物類、クジャク、スズメ、ワシやインコなどの鳥類、チョウやトンボなどの昆虫類など、あらゆる対象がモチーフになっている。

なかでも、ポスターにもなっている、ケシ(芥子)のハットピンは見事。

デザインセンスもさることながら、そうしたモチーフの対象に気づき見つけ出し、それをデザイン化し、形にしていく…つまり、“気づき”、“観察力”、“具現化”のいずれもがバランス良く備わっていたのが、ルネ・ラリックなのだろう。

いま、蛇とかバッタをモチーフにした花瓶があったとしたら、やはり多少に違和感を覚えると思う。しかし彼の作品は違う。全く不自然に見えないから不思議だ。

そして彼は、そうした能力に加えて、工場経営者としての能力も発揮していく。

世界初の公開となった、ルネ・ラリックのメモも展示されていたが、それには、デザイン案や製造法に、工場の運営についても書かれたらしい。残念ながら、メモは展示だけだったので、何が書かれているか解説がほしかった。

展覧会のポスター
展覧会のポスター

社会の変化と要請に対して、柔軟に対応していく。先述の“観察眼”はモチーフだけでなく、社会全体にも向けられていたのだ。

「かつて誰も見たことのない」ジュエリーの創造に情熱を燃やすことから始まった、ジュエリーデザイナー、ルネ・ラリック。その後、香水瓶の注文という、ひょんなことから、ガラスという素材に注目した彼は、ガラス工芸家として独自の地位を築く。

車の先端に取り付けるカーマスコットや、箱根ラリック美術館でも見た、オリエント急行の車内装飾、屋内の装飾やテーブルウェアなど、ガラスという素材を生かしたさまざまな製品を世に送り出す。製品を、さらにより多く世に送り出すため、実業家としても活躍するようになる。

もちろん、彼自身に才能があったからできたことだし、時代もちょうど彼を求めていたということもあるのだろうが、人生何が起こるかわからない。

Posted by ろん