2653 リニア新幹線に見る利益誘導の姿

社会・政治・事件

JR東海が、2025年に品川-名古屋間の開業を目指している、リニア新幹線。

愛知万博で展示されたリニア新幹線の車両
愛知万博で展示されたリニア新幹線の車両

先日、その品川-名古屋間が、最短で40分になると発表された。もともと想定された時間とほぼ同じだが、これは3案あるルートのうち、もっとも距離が短い南アルプスを貫くルートを選択した場合だ。

他に、木曽谷を経由するルート、伊那谷を経由するルートがあるが、いずれも遠回りで、時間も6~7分ほど余計にかかる。そちらの方が、コストがかからないのであれば、選択肢として考えられるが、むしろそちらの方が余計にコストがかかる。

それでも選択肢に残っているのは、地元自治体の“強い”要望があるからだ。

あえて遠回りさせ、そこに駅を作ってもらおうという魂胆だ。

JR東海が開いた地元向けの説明会で、出席者からこんな意見が出されたという。

 出席者からはルートに関する質問が続出。南ア貫通のCルートについて、「南アに長いトンネルを通すのは危険」「トンネル内で緊急事態があったとき、どうするのか」「リニアは地域振興の原動力になる期待がある。人のいないところに鉄道が走って何の意味があるのか」などと疑問を投げ掛けた。

(中略)

 出席者からは、このほか「各県のルートは各県に委ねるべき」「1県1駅でなく、駅を増やしてほしい」「人を物のように速く運ぶなら直線になるが、これからの時代は、もっと人間的ゆとりが必要。人間的、将来的な選択を」との要望もあった。

自分たちの利益になる場所に駅を作ってほしいというのが、もともとの発想にあるため、リニア新幹線の大前提である、「東京-名古屋-大阪を最短距離で結ぶ」目的が、彼らには理解できないのだ。読めば読むほど、彼らの主張は噴飯ものだ。

地域振興が目的ではないし、人間的なゆとりを生むために作るのでもない。そんな主張を聞いている僕の方が恥ずかしくなってくる。

いつの時代も利益誘導ばかり考えて、それを恥ずかしくもなく言えてしまう人がいるんだなと。これがそのまま政治にもつながっているのだと思うと、日本の将来はますます暗い。

Posted by ろん