地下鉄/宝迫 典子
地下鉄 宝迫 典子 小学館 2002-10 |
“絵”と“言葉”に込められた思いをじっくりと味わうことのできる、大人の絵本。
(決して、ジャンルは鉄道ではないので誤解なきよう)
視覚を失った主人公の少女は、閉じこもるだけの日々を送っていた。迎えた15歳の誕生日。思い切って、地下鉄に乗ってふたたび一歩を踏み出す。
なにげなく乗っている地下鉄。地下を走っている間、外界の景色とは遮断され、外の景色が見えないという点では盲目の少女を含め、全員が同じ状況になる。多くの人たちが、そんな状況が耐えられず、変えようと、本を見たり音楽を聴いたり、広告を見ていたりする。
一方、少女は外の風景を想像し、自分と向き合う。
遠い記憶とまだ見ぬ未来…
まるで夢を見ているような不思議な絵が続く。これは少女が空想した風景だろうか?
恐れ、迷い、痛み、悩み…あらゆる苦しみが少女を襲う。
永遠に走り続ける 地下鉄はない
ぬれてしまった服も いつかは乾く
旅を続けていくうちに、少しずつ、変化が起きる。
目的地に着けば、必ず明るい地上に出るのだ。見えないからこそ、見えるものがあるのかもしれない。盲目の少女も、きっと明るい目的地に向かっているのだろう。
絵本なんて久しぶりだ。絵の中には、さまざまな動物たちが潜んでいて、それを探し出すのも楽しかった。