2584 期待
昨年知り合った須貝美和さんの通う大学の卒業制作展(東京五美術大学連合卒業・修了制作展)を見学。
他のさまざまな作品と比べ、彼女の絵はあきらかに異質であった。
美術系大学の卒業制作展というものを見学したのは初めてだったので、本当はどうか分からないが、おそらくこうした場は、これまで学んできた自分の集大成を披露するところであって、もっとも自信のある作品で望むのが普通だろう。
しかし彼女は、それをあえて封印したのだ。きっと異質に感じたのは、これまで彼女の主要テーマであった「タオル」を“卒業”し、まったく新しい自分を見つけ出そうと模索する絵であったからに違いない。
現状に甘んじず新しい自分の姿を見つけだそうとする姿は、見る者の心を揺さぶる。
でも、そう思うのは、僕がここに至る経緯を多少なりとも知っていたから、そう思えるのかもしれない…という気もした。
なぜこの絵が描かれたのか?
なぜこの構図なのか?
なぜこの色を使ったのか?
…などなど、本当にうまいと思わせる絵からは、そうした問いの答えが見つかるような気がする。もちろん、僕の勝手な類推だし、本当の答えなんてないかもしれない。それでも自分なりの答えが出せるのが、僕の考えている“うまい絵”だ。
ときどき、この世に“偶然”なんて存在しないんじゃないかって思うことがある。世の中すべてが“必然”で作られているということだ。偶然なんてない。仮にたまたまだとしても、そうなる必然があったからだ。
絵も同じ。“うまい絵”というものは、絵を見ただけで「なるほど、こういう絵が作られる必然があったんだ!」と思わせるものがあるのだ。
あくまでこれは僕の勝手な感想であるが、今回の作品は、以前のタオルで見たような“必然”が薄い気がしてしまった。かなり偉そうなことを言ってしまってるけれど。
須貝さんに、会場内でお会いして、いろいろお話を伺うことができた。今後より自分自身を磨き、素晴らしい作品を創造する準備を着々と進めているようで、将来への期待がますますふくらんできたような気がした。