青春軍艦島1972

建築・都市,龍的図書館

1972 青春 軍艦島 1972 青春 軍艦島
大橋 弘

新宿書房 2006-06
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「日当がいい!」たったそれだけの理由で、当時27歳だった筆者が端島(軍艦島)で約半年間働く。そのときの暮らしぶりと、当時の写真をつづっている。とかく廃墟ばかりが目立つ軍艦島関連の本で、これほどまでに、いきいきとした人々の表情が写っている写真集はなかったように思う。

著者の与えられた仕事は、坑内で使う資材を船から揚げて届けることだった。資材は、坑木や酸素ボンベ、ワイヤー、セメント、ときにはダイナマイトなど。慣れない仕事に、さまざまな苦労をしながらも、少しずつ島での生活に慣れていく。

恐ろしく不味い具のないラーメン(ふやけて糊状になってるらしい)、時化たときに外を歩く方法、同じく時化たとき逆流してくるトイレなど、毎日の生活は大変だったようだが、そこから面白いことを見つけてやろうという思いが垣間見えて面白い。

なかには、流れ者の男とちょっと年上の女性が失踪し「若い男とおばさんが逃げた!」というニュースで持ちきりになった…なんてこともあったようだ。

島を離れる1ヶ月ほど前に起きた火事は、燃え上がる光景や、この火事で亡くなった人の葬式、島外にある墓地への葬送と出棺なども捉えられている。

いまは廃墟となった端島の写真ばかりが紹介されるが、確かににこのような人々の生々しい生活が現実としてあったのだ。

Posted by ろん